パラレル

□Rabbit or Wolf?? *
1ページ/11ページ


その昔、世界は二つの部族によって支配されていた。

紅き瞳の白ウサギ族と、蒼き瞳の灰色オオカミ族−

彼らの間には、決して破られてはならない掟があった。

その掟とは…

『二つの種族が血を交わらせること勿れ』

彼らは1000年の間、この掟を忠実に守り、神々に守られて、互いに平和を保って暮らしていた。

しかしある時。

オオカミ族の少年と、ウサギ族の少女が互いに恋に落ちた。

彼らは周囲の者たちが止めるのも聞かず、愛を深めていった。

そして…

少女は、少年の子を孕んだ。

二人は深い森へと逃げた。

部族の追っ手から逃れるため、そして、神々の裁きの手から逃れるために…

やがて、少女はその子供を産んだ。

可愛らしい男の赤ん坊であった。

彼らは密かにその赤ん坊を育てた。

誰にもばれることがないよう、内密に、内密に…

しかし、人々の目はごまかすことはできても、神の目はごまかしきることはできなかった。


赤ん坊が生まれて、1年が経ったある日。

神の使いが彼らの元に訪ねてきた。

曰く、
「その赤ん坊を差し出せ。さすれば、汝らの罪も消えよう」
と。

彼らはその申し出を、断じて受け入れなかった。

その結果…

神の怒りを買った彼らは、その赤ん坊とともに裁きを受け、彼らの部族−白ウサギ族と灰色オオカミ族もまた、神によって滅ぼされたのであった。


しかし、人々は知らない。

未だ、この世には、彼らの血を引く者−白ウサギ族と灰色オオカミ族の末裔が、生きているということを…


***


時は流れ、現在。

ゾロとサンジは、図書館で調べ物をしていた。

二人は大学生。

彼らは何故か、この『白ウサギ族と灰色オオカミ族の伝説』についてのレポートを出す羽目になっていたのである。

「へぇ…二人は禁忌を犯して愛を貫いたってわけか」

「…あほらし」

「そうか?俺は好きだぜ、こういう話」

ロミオとジュリエットみたいでさ、と楽しそうに微笑むサンジに、ゾロは呆れたようにため息をつく。

「だいたい、神に滅ぼされたとかいうあたり、怪し過ぎるだろ」

「そう?」

「俺は神なんか信じねぇ」

ゾロがきっぱりと言い切ったところで、閉館のチャイムが鳴った。

「お、閉館だ。そろそろ帰るか」

「ああ」

二人は机いっぱいに広げていた本だの資料だのノートだのを片付けて、寮に向かった。

「今日の晩飯、何がいい?」

「べつに…何でも」

毎回の同じやり取りに、サンジはため息をつく。

作ったものを、美味いと残さず食べてくれるのは嬉しい。

でも、たまにはリクエストだってしてほしいものだ。

サンジは質問を変えた。

「んじゃ、てめぇの好きなおかずは?」

「…肉じゃが」

少し考えて、素直に答えたゾロが可愛くて、サンジは満足そうに微笑んだ。

「うし。じゃあ、今日はとびきり美味い肉じゃが作ってやるよ」

「ああ」

楽しみにしてる、とゾロもふわりと笑顔を返した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ