パラレル
□Rabbit or Wolf?? *
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その昔、世界は二つの部族によって支配されていた。
紅き瞳の白ウサギ族と、蒼き瞳の灰色オオカミ族−
彼らの間には、決して破られてはならない掟があった。
その掟とは…
『二つの種族が血を交わらせること勿れ』
彼らは1000年の間、この掟を忠実に守り、神々に守られて、互いに平和を保って暮らしていた。
しかしある時。
オオカミ族の少年と、ウサギ族の少女が互いに恋に落ちた。
彼らは周囲の者たちが止めるのも聞かず、愛を深めていった。
そして…
少女は、少年の子を孕んだ。
二人は深い森へと逃げた。
部族の追っ手から逃れるため、そして、神々の裁きの手から逃れるために…
やがて、少女はその子供を産んだ。
可愛らしい男の赤ん坊であった。
彼らは密かにその赤ん坊を育てた。
誰にもばれることがないよう、内密に、内密に…
しかし、人々の目はごまかすことはできても、神の目はごまかしきることはできなかった。
赤ん坊が生まれて、1年が経ったある日。
神の使いが彼らの元に訪ねてきた。
曰く、
「その赤ん坊を差し出せ。さすれば、汝らの罪も消えよう」
と。
彼らはその申し出を、断じて受け入れなかった。
その結果…
神の怒りを買った彼らは、その赤ん坊とともに裁きを受け、彼らの部族−白ウサギ族と灰色オオカミ族もまた、神によって滅ぼされたのであった。
しかし、人々は知らない。
未だ、この世には、彼らの血を引く者−白ウサギ族と灰色オオカミ族の末裔が、生きているということを…
***
時は流れ、現在。
ゾロとサンジは、図書館で調べ物をしていた。
二人は大学生。
彼らは何故か、この『白ウサギ族と灰色オオカミ族の伝説』についてのレポートを出す羽目になっていたのである。
「へぇ…二人は禁忌を犯して愛を貫いたってわけか」
「…あほらし」
「そうか?俺は好きだぜ、こういう話」
ロミオとジュリエットみたいでさ、と楽しそうに微笑むサンジに、ゾロは呆れたようにため息をつく。
「だいたい、神に滅ぼされたとかいうあたり、怪し過ぎるだろ」
「そう?」
「俺は神なんか信じねぇ」
ゾロがきっぱりと言い切ったところで、閉館のチャイムが鳴った。
「お、閉館だ。そろそろ帰るか」
「ああ」
二人は机いっぱいに広げていた本だの資料だのノートだのを片付けて、寮に向かった。
「今日の晩飯、何がいい?」
「べつに…何でも」
毎回の同じやり取りに、サンジはため息をつく。
作ったものを、美味いと残さず食べてくれるのは嬉しい。
でも、たまにはリクエストだってしてほしいものだ。
サンジは質問を変えた。
「んじゃ、てめぇの好きなおかずは?」
「…肉じゃが」
少し考えて、素直に答えたゾロが可愛くて、サンジは満足そうに微笑んだ。
「うし。じゃあ、今日はとびきり美味い肉じゃが作ってやるよ」
「ああ」
楽しみにしてる、とゾロもふわりと笑顔を返した。