パラレル
□お江戸土産 *
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たくさんの人で賑わう、埃っぽい町。
道の両脇には、所狭しと店が並ぶ。
ここは、将軍のお膝元・江戸の町。
その混み合った道を、2人の旅の男が歩いていた。
「あ〜、やっと着いたぜ」
と、嬉しそうな声を上げたのは、さらさらとした金髪の男。
前髪で左目が隠れている。
名前をサンジといった。
その隣を険しい顔で歩いているのが、ロロノア・ゾロ。
緑の髪に、左耳には金の耳飾り。
腰には3本の刀を差している。
「しかしよぉ…さすが江戸だぜ…」
辺りを見回しながら、サンジが言った。
「かわいい女の子がいっぱいだぁ〜!!」
顔を際限なく崩しているサンジの頭を、ゾロがぱかん、と殴る。
「いでっ!何すんだ、ゾロ」
「てめぇ、何でここ来たのか分かってんだろうな」
「…わぁってるよ」
「ったく…どうすんだよ」
***
時は遡ること一月ほど前。
「あ〜、ヒマだぁ〜」
城主であるルフィが、いつものごとく退屈していた。
そんなルフィに、側近のゾロとサンジは呆れ顔。
「んなこと言ったってしょうがねぇだろーが」
「つーか仕事しろよ、クソ城主」
「ああ〜、ヒマだぁ〜」
ルフィはしばらく手元の扇を弄んでいたが、やがて何かを思いついたらしく、2人に声をかけた。
「おいゾロ、サンジ」
「何だ」
「お前ら、江戸に行け」
ルフィがにっと笑って言った。
が、突然言われた2人はルフィの言った意味が分からず。
「…は?」
「てめ今、何つった?」
そんな2人に、ルフィはあっけらかんと返す。
「江戸に行けっつった」
しばし沈黙。
やがて、2人同時に叫んだ。
「「江戸おぉぉぉ!!??」」
「うん」
ルフィはにっこりして続ける。
「江戸行って、何か面白いもん探してこい」
「…んなもん、自分で行きゃあいいじゃねぇか」
「だって俺仕事あるもーん」
「「……」」
いつもやってねぇくせに、と思った2人だったが、何も言わなかった。
もう何を言っても無駄だと分かっていたからだ。
2人が黙っているのを肯定の返事だととったのか、ルフィが上機嫌で言った。
「んじゃ、頼んだぜ」
***
そういうわけで江戸に来たわけなのだが…
「なぁ〜、別にルフィの土産なんてあとでいいだろ?それより先に遊ぼうぜ」
と、いろいろな店の売り子を眺めて幸せそうなサンジを横目に、ゾロはため息をついた。
女遊びは嫌いではないが、興味はなかった。
「あのなぁ…」
と、ゾロが口を開きかけたその時。
「きゃあぁぁぁ!!!」
近くで、女の悲鳴が聞こえた。