パラレル

□王子様はお料理がお好き
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結婚から1ヶ月が経ち、それなりに生活も落ち着いてきたある夜のこと。

2人はそれぞれにシャワーを浴び終え、ベッドの上でのんびりとくつろいでいました。

「そういえばよ、」

「ん?」

「お前、何で舞踏会の時、給仕係の格好なんてしてたんだ?」

ゾロが尋ねると王子は、ああ、と答えました。

「だってさ、王子の格好してたら、自分が好きなように行動できないじゃん」

「そうなのか?」

「そうなんだよ。なんかよく分かんねぇ奴の挨拶とか受けたりな」

色々と面倒くせぇんだ、と王子は持っているグラスのワインを一口煽りました。

ゾロは、そうか、と呟いてしばらく黙っていましたが、やがて小さな声で言いました。

「あの料理…」

「ん?」

「てめぇがワインと一緒に持ってきたやつ…サーモンの、カル…」

「ああ、サーモンのカルパッチョな。あれが?」

ゾロは少し黙って、それから続けました。

「…あれもやっぱ、てめぇじゃねぇ奴が作ったのか?」

「…どうしてそう思う?」

逆に質問されて、ゾロは少し困ったような表情をしました。

「どうして…って……王子は料理なんてしねぇ…から」

そう答えたゾロに、王子は苦笑しました。

「普通はそう思うよなぁ…でも、」

王子は、残っていたワインを一気に流し込んで続けました。

「…あれは、間違いなく俺が作った。…何なら、今から作ってるとこ見せてやろうか」

「…え」

王子は、にっと笑うと、ゾロの手を掴んで、部屋の隅へ向かいました。

そして、王子が壁を押すと…

「なっ…??!!!」

そこには、小さいながらもきちんとしたシステムキッチンがありました。

「これは…??」

「俺の秘密基地♪」

あまりの展開に驚いて、口をぱくぱくさせているゾロを見て、王子は楽しそうに言いました。

「や…秘密基地…て……」

ぽかんとしているゾロの隣で、王子はさっさと準備を始めました。

冷蔵庫からサーモンを取り出し、包丁でスライス。

それにベビーリーフを洗って、彩り良く皿に盛り付けていきます。

「ほい、完成」

そう言われてゾロの目の前に差し出された皿にはあの時の料理が。

部屋に戻って食べてみると、それは間違いなくあの時の味がしました。

「…美味ぇ」

「当たり前だ」

王子はゾロの頭をコツンと叩きました。

それから、ふっとため息をついて言いました。

「お前、ずっとこれ食いたいとか思ってたのか?」

「や…そういう訳じゃねぇ…けど」

「けど?」

「……お前の料理、好きだ」

そう言ったゾロの顔は、なぜか赤くなっていて。

王子はふわりと微笑んで、そんなゾロの髪を撫でました。

「こんなんなら、いつでも作ってやるよ」

「…ん」

こくんと頷いたゾロに、王子はそっとキスをしました。

最初は軽く、そしてだんだん深く、深く…

「…て、何押し倒してやがる!!」

「あ、ばれた?」

もうちょっとだったのに、と王子は口を尖らせました。

「ばれた?じゃねぇよ…さっきもやって、シャワーも浴びたじゃねぇか」

「でもさぁ、親父がうるさいんだよね」

「あ?」

王子は、にっこりと笑って言いました。

「早く孫の顔が見たいって」

「なっ…?!」

「てことで、」

顔を真っ赤に染めて、身体を硬直させたゾロを、王子は再びあっさりと押し倒します。

「早く俺の子供孕んでvv」

「っ〜あほかてめぇは!!俺は男だ!!んなもん、できる訳ねぇだろうが」

「わかんないよ??いっぱいやったら、できるかもしれないじゃん」

「っ〜この変態王子!!」

こうして、二人の長い夜は更けていくのでした。


END

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