パラレル
□ちいさなこいびと
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ここは、グランドライン幼稚園。
今日も元気いっぱいの園児たちの声が響き渡ります。
「だからー、おれがさきにひろったの!!」
「ちがう!!おれがさき」
「こら!!二人とも止めなさい」
ちびっ子たちに大人気のチョッパーマンのぬいぐるみを取り合ってケンカをしている
ゾロとサンジの間に、担任のナミが仲裁に入ります。
この二人、いつも一緒にいる割に、ケンカが耐えないのです。
まあ、ケンカするほど仲が良い、ということなのでしょうか。
「もう、ケンカはダメだって言ってるでしょ」
「だってゾロが、おれがさきにひろったチョッパーマンとっちゃうんだもん」
「ちがうー。おれがさきにひろったんだ」
再び騒ぎ出した二人に、ナミが一喝。
「もう、ケンカするなら、チョッパーマンは先生がもらいます」
「「えーっ」」
「おまえのせいでせんせいにとられちゃったじゃんか」
「おれのせいじゃない。おまえのせいだー!!」
ぎゃあぎゃあと言い出した二人にナミはため息をつき、二人を引きはがしにかかったのでした。
***
そんな訳で。
ナミの膝の上には、サンジがちょこんと座り、大人しく本を読んでもらっていました。
ゾロはといえば、ルフィたちと一緒に積み木で遊んでいます。
しかし、お互いにお互いのことが気になるようで、二人ともちらりちらりと相手の様子を覗っているのでした。
そわそわと落ち着かない様子のサンジに、ナミは小さくため息をつきました。
「サンジくん、ゾロのこと、気になる?」
「えっ…」
サンジは一瞬図星を指されたような顔をしましたが、すぐにぶんぶんと首を横に振って言いました。
「そんなことないよっ。おれ、もうゾロとはなかよくしないもん。それより、はやくつづきよんでよ、せんせい」
頑張って平静を装ってはいるものの、5歳児にポーカーフェイスが使いこなせる訳もなく。
必死に動揺を隠しているサンジの可愛らしい様子に、ナミは苦笑しました。
「そうね。でも先生、そろそろおやつの用意しに行かなきゃ」
「えーっ」
「おやつの用意終わったらまた読んであげるから、それまで待っててくれる?」
「うん…」
少しだけしょんぼりした様子で、サンジはナミを見送りました。
ふとゾロの方を見ると、ゾロもサンジの方を向いていて。
サンジと目が合うと、はっとして目を逸らしてしまいました。
たぶん、今の様子を見ていたのでしょう。
ひょっとしたら、サンジの言葉も聞いていたかもしれません。
「……」
サンジは、黙って抱えていた絵本を置き、代わりにチョッパーマンのぬいぐるみを拾い上げました。
サンジは、本当は自分から謝るなんて、したくないのです。
けれどそれ以上に、ゾロと一緒にいたい、という気持ちの方が強かったのでした。