パラレル

□My precious one *
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時は遡ること2500年前。

ギリシア最大にして最強のポリス、アテネは、50年に及んだペルシア戦争に勝利し
その後ギリシアポリス間で結ばれたデロス同盟の盟主となることで
アテネは名実ともにギリシア世界の中心となった。

また、将軍ペリクレスの指導もとで民主政を確立したアテネ市民は、平和を謳歌していた。

そんなアテネのアゴラは、今日もたくさんの人で賑わっていた。

4、5人で集まって議論している者、集会を開いている者、音楽に興じている者−

しかし、何と言っても一番の賑わいを見せているのは、市場であった。

食べ物も、日用品も、衣服も、ここに来れば何でも揃った。

しかしここには、現代から見ればあまりにも異様な"商品"が売られている区画があった。

その"商品"とは−

人間。

"商品"として、すなわち奴隷として、売られる人間が存在したのである。

人が売られている、そんな異様な空気の中を、サンジはゼフに連れられて歩いていた。

ゼフは、この辺りでは1、2を争う有力者で、サンジはゼフの養子だった。

今回二人が奴隷市にやって来たのは、サンジ専用の奴隷を購入するため。

もう18で、立派な大人なのだから、奴隷の一人くらい持っておけ
というゼフの意見で、二人は店を回っていた。

「やっぱなぁ。可愛い女の子がいいよなァ」

「…勝手にしろ」

サンジの言葉に、ゼフはため息をつく。

サンジは女好きだが、その程度が半端ではないのだ。

出会った女性には、すべて声をかける。

それも、年齢、身分を問わずに。

「おっ、あの子可愛いな」

「あっ、あのお姉さんもお綺麗だ」

「いや、でもこっちも…」

店をあちこち飛び回るサンジの後ろを、ゼフは呆れ返った表情で歩いていた。

そのまましばらく歩いていると、やがてサンジが立ち止まった。

「何だ?絶世の美女でも見つけたか?」

「……」

黙ったまま動かないサンジの視線の方向をゼフが追うと、その先にいたのは−

緑の髪をした、逞しい男。

年齢は、サンジと同じくらいだろうか。

「…お前、こういうのが趣味だったか、チビナス?」

その男をじっと見つめて微動だにしなかったサンジは
ゼフの"チビナス"に反応して、はっと我に返った。

「チビナスじゃねぇっつってんだろーが、クソジジイ!」

「ふん…そういうのにいちいち反応するのがガキなんだよ、チビナス」

「んだと、クソジジイ!」

二人が言い合っていると、店の奥から店主が姿を現した。

「やあ、旦那。お気に召す商品はおありで?」

「ああ。こいつがどうも、この緑のを気に入ったようで…」

「い、いや、別に…」

「そうですか!いやはや、旦那の息子さんは、まったく良い目をお持ちだ」

ゼフの言葉を否定しようとしたサンジの言葉は
急に機嫌が良くなった店主の説明によって、遮られてしまった。
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