パラレル
□I love you の伝え方
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「ここ、いいかな?」
ある日曜日の午後。
ゾロがお気に入りのカフェでコーヒーを飲んでいると、金髪の男が目の前で微笑んでいた。
周りを見ると、席はすべて埋まっている。
ゾロがこくんと頷くと、男はありがとう、と言って
店員に、すでに無くなりかけていたゾロの分も、コーヒーを頼んだ。
それが、サンジとの出会いだった。
***
それから半年。
二人は、いわゆる恋人同士になっていた。
歳は同じ21歳。
ゾロは全く知らなかったのだが、サンジはゾロと同じ大学らしい。
同じ大学と言っても、ゾロとは違う学部だったから
ゾロがサンジのことを知らなかったとしても、別に不思議ではないのだけれど。
サンジの方は、どうしてゾロのことを知っていたのかというと
入学当初からちょいちょい見かけてはいて、二人の共通の友人であるウソップを通じて
ゾロのことを知ったという。
付き合っている、とは言っても、ゾロはサンジに好きだと言ったことはなかった。
キスもその先も、サンジには許していたのだけれど
「好き」という2文字だけは、何となくタイミングを逃してしまい
未だ言うことが出来ずにいたのだ。
そのせいか、サンジはたまに、少しだけ寂しそうな表情をする。
それでもサンジはゾロに何も言わないから、ゾロもどこかすっきりしないまま
ここまできてしまったのだけれど。
そんな二人の休日は、のんびりしたものだった。
街をぶらついたり、どちらかの家で過ごしたり。
時には遠くまで出かけることもあった。
サンジといるのは楽しかったし、それなりに思い出もできた。
だから、こんな日々がこれからもずっと続くのだろうと
ゾロは漠然とそう思っていたのだけれど。
ある日のデートのとき。
その日は朝から、サンジの様子がおかしかった。
一見普通だが、何かを思い詰めているような、そんな気を、ゾロは僅かに感じ取っていた。
サンジはそれを必死に隠しているようだったから、ゾロは何も言わなかったのだけれど。
その感情が爆発したのは、二人が出会った、あのカフェだった。
爆発、とは言っても、それはとても静かなもので。
サンジは一口コーヒーをすすると、ただ一言
「もう、終わりにしよう」
と言ったのだ。