パラレル

□Hold you
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プルルル… プルルル…

「…ん……」

耳慣れた呼び出し音で、サンジは目を覚ます。

時計を見れば、短針が指しているのは3の数字。

こんな時間に電話をしてくるのは、サンジは一人しか知らない。

「もしもし」

「…もしもし」

サンジが電話に出ると、その耳に響いたのはやはり、愛しい恋人の声で。

しかしその声は、それきり何も言ってはくれないから、サンジはどうしたの、と問うた。

「…いや……」

何でもない、とその低く掠れた声は答える。

それでもサンジがゾロ、と呼びかければ、彼はぶっきらぼうに答えた。

「別にっ…ただ、ちょっと…」

声が、聞きたくなっただけだ。

最後の言葉は、照れてしまったのか、小さな声になってしまったけれど
それが可愛くて、サンジは思わず微笑んだ。

「そっか」

俺も、ゾロの声聞けて、嬉しいよ。

ゾロはまたしばらく黙っていたけれど、やがて起こしてしまって悪かった、と詫びて
それからおやすみ、と呟いた。

サンジもおやすみ、と返して、ゾロが電話を切ってから、サンジもそっと携帯を置く。

そうして再びベッドに潜り込みながら、サンジは静かにゾロのことを思った。

ゾロはたまに、サンジに電話をかけてくる。

しかも、今日のような深夜に。

そんな時は必ず、ゾロは不安を抱えている。

ゾロは決してその不安をサンジに話すことはないし
もしかしたらゾロは、自分が不安を抱えていることに気づいてすらいないかもしれない。

けれどゾロは一度だけ、サンジにこう言ったことがあった。

「お前が隣にいると安心する」

と。

その言葉を聞いてサンジは、ゾロの傍に居てやりたいと、強く思ったのだ。

もちろん、一緒に住んでいるわけではないから、四六時中傍に居ることは出来ない。

だからせめて、自分に会いたくなった時はどんな時でも
電話をしてこいと、そう言ったのだ。

ゾロがどんな子ども時代を過ごしてきたのかは知らないが
ゾロは甘える、ということを知らなかった。

だから、始めはそう言っても一向に電話などしてこなかったが
一緒に過ごす時間が増えるにつれて、ゾロは徐々にサンジに心を開いていったのだ。
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