パラレル

□Still...
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サンジの手が、優しくゾロの頭を撫でる。

それが気持ち良くて、ゾロはサンジの胸に顔を寄せる。

サンジはふわりと笑って言った。

「ゾロ…いつか、2人で…」


***


また同じ夢を見た。

窓から外を眺めているうちに、眠ってしまったのらしい。

気がつくと、もう空は夕焼けに染まっていた。


あの日からー

サンジがいなくなってから半年。

料理の修行に行ってくる、と言って家を出て行ったきり、サンジは戻って来なかった。

それまでも、サンジが家を空けることは何度かあったから
ゾロは何も思わずに見送ったのだ。

桜が散る頃には戻ってくると、そう思っていた。

けれど、そろそろ葉が色を変えようかという今になっても
サンジが帰って来る気配など全くなくて。

それどころか、メールも電話も返って来ないのだ。

いつもなら、うざったいほどにそれが来るというのに。


捨てられたのだと、何度も思った。

いや、思おうとした。

けれど、サンジとのあの温かく幸せな日々を、忘れられるわけもなくて。

時間が許す限り、ゾロはサンジを探し回った。

それでもサンジは見つからなくて。

いなくなって初めてサンジへの想いに気付き、何度も涙を流した。

捨てられてもなお女々しくサンジのことを想い続ける自分が情けなくて
さらに涙が溢れた。

そんな夜を幾つも過ごしているうちに、季節は移り変わった。

サンジがいなくなった春は終わり、夏も過ぎて、季節は秋になろうとしている。


そより、と風が吹いて、カーテンを揺らす。

昼中はまだ暑いが、夕方になると急に涼しくなって、夏は終わったのだと感じられる。

そういえば、サンジは秋の夕陽が好きだったと
ゾロは目の前で沈んでいく太陽を眺めながら、ぼんやりと思い出した。

「あいつも、この夕陽、見てんのか…」

無意識に呟かれた自分の言葉に、ゾロは思わず苦笑した。

「ほんと、俺も往生際が悪いよなぁ…」

ばかみてぇ、と呟くと、涙がこぼれそうになったので、ゾロは慌てて堪えた。

それを誤魔化すように、そろそろ夕飯にしようと、ゾロが立ち上がったその時。

ガチャガチャ、と玄関の鍵が開く音がした。

ゾロは驚き、何者かと身構えて玄関へ向かった。

「誰だ」とゾロが言ったのと、ドアが開いたのは、ほぼ同時。

ドアの向こうに立っていた人物を見て、ゾロは絶句した。
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