パラレル

□White X'mas
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凍てつくような寒さでかじかんだ指先に、サンジははあっと息を吐いて温める。

それからゾロの髪についていた小さな雪をそっと払ってやると
ゾロはくすぐったそうに目を瞑った。

二人は今、イルミネーションの光に綺麗に彩られた街中を歩いている。

外は雪が降るほど寒く、時間ももう遅いというのに
人通りはまだ決して少ないとはいえなかった。

それもそのはず、今日はクリスマス・イブなのだから。

今二人が歩いている場所は、この辺りではイルミネーションが綺麗なことで有名で
周りは9割方カップル。

男二人で歩いているサンジとゾロは、少しばかり異彩を放っていた。

尤も、二人だってカップルなのだけれど。

二人が出会ったのは、二年前のちょうどこの季節。

出会ったばかりの頃は、二人とも喧嘩ばかりで。

それなのにいつの間にか、お互い気になる相手になっていて。

いつしか二人は、互いの愛を育む仲になっていた。

「ゾロ」

サンジが立ち止まって名前を呼ぶと、ゾロも歩みを止めてサンジの方を見た。

「ここ…覚えてるか?」

「…ああ」

ゾロが頷いたその場所は、駅前の小さな広場。

そこは、二人の関係が始まった場所でもあった。

数組のカップルが寄り添う中、サンジはするりとゾロのコートのポケットに
手を滑り込ませて、その中にあるゾロの右手をそっと握る。

ゾロは何をするんだ、というようにサンジを睨みつけるけれど
サンジは大丈夫、と笑って。

「誰も気づかねぇよ。みんな自分の相手に夢中なんだから」

もちろん俺もね。

そう言って幸せそうに微笑むサンジに、ゾロは黙って外方を向く。

ゾロはサンジの笑顔に弱いのだ。

サンジはそのまま、ぐいっとゾロの腰を引き寄せて、ぎゅうっと抱きしめる。

今度こそ本気で抵抗しようとするゾロを、サンジは腕力で押さえつけて
外気で冷たくなった唇を、ゾロのそれに押しつけた。

「…っ…ん…!!」

すっかり冷えてしまった唇を温めるように、サンジはそっとゾロのかさついた唇を舐める。

本当はもっと深く口づけたかったのだけれど、ゾロの機嫌を損ねてしまっては意味がないので
サンジはゾロの唇を湿らせただけで離れた。

それでもゾロが不機嫌になるのには十分だったようで。

ゾロは顔を真っ赤にしたまま、外方を向いてしまった。

「ねぇ、そんなに怒らないでよ」

「…」

「今日が何の日か、知ってるでしょ?」

「…イブ、だろ」

「そう。だから怒らないで?」

「…意味わかんねぇ」

「プレゼント、あげるから」

「いらねぇ…」

「そんなこと言わないで。何でも欲しいもの、あげるから」

「そんなもん、ねぇ」

「そう。なら…」

俺を、あげる。

耳元で囁かれたその言葉に、ゾロは思わずサンジの方を向いた。

「てめっ、な…」

「もらって、くれる?」

「っ…!」

ゾロよりもほんの少しだけ身長が低いサンジがかがんで、上目遣いにゾロを見上げる。

ゾロはふい、と横を向いてしまった。

「もらってくれないの、ゾロ」

「……」

「ねぇ、ゾロ、」

「っ…か、勝手にしろ!」

そう言ったゾロの耳は真っ赤に染まっていて。

「ゾロ、真っ赤」

「うっせぇ、寒ぃんだ…」

「……」

サンジはしばらく黙っていたけれど、やがてくすりと笑って。

何が可笑しい、とゾロが睨みつけると
サンジはごめんと言いながらゾロの冷たい頬にキスをした。

「ゾロ、寒い?」

「…ああ」

「じゃあ…」

あったかいとこ、行こっか。

それが何を意味するのかを瞬時に理解したゾロは顔をしかめたけれど
サンジが握った手を緩く握り返した。

それにまたサンジは笑ってゾロにキスをして。

「ゾロ、ありがとう。愛してる」

「…ああ」

そうして二人は歩き出す。

小さな雪の欠片がふわりと二人の繋がれた手に舞い降り
そのままゆっくり二人と溶け合って消えた。


END

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