その1
□誰よりも大切な君だから *
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「…俺は。…てめぇの傍に居てぇ」
「うん」
「もう…夜だけじゃ、足りねぇんだ。…ずっとずっとてめぇを近くに感じてぇ」
「うん」
「…でも」
不安なんだ
と、ゾロが呟いた。
サンジも同じ気持ちであるのか、不安なのだ、と。
もちろん、サンジが情けでゾロと付き合っている、なんて思っている訳ではない。
ゾロはそんなことを望むような性格ではないことをサンジは分かっているし
サンジだってそんな残酷な優しさを与えるような男ではないことを、ゾロは分かっている。
それでも。
ゾロは不安だった。
こんなにも想っているのは、自分の方だけなのではないか
サンジにしてみたら、ただ重たいだけのお荷物なのではないか、と。
ゾロの話を聞き終わると、サンジは目尻にそっとキスをした。
そうしてゾロに優しく語りかけた。
「俺も同じ気持ちだよ、ゾロ。ゾロが俺を想ってくれてるのと同じくらい…いや、それ以上に、俺はゾロが好きだよ」
「……」
未だ不安げに黙っているゾロを見て、サンジはゾロの正面に移動した。
そして、ゾロの右手を自分の左胸にそっと押し当てた。
「…!!」
驚いて、ゾロは慌てて手を離そうとする。
しかしサンジは、にこりと微笑んで、それを制した。
ドクン、ドクン、と脈打つ感覚が、ゾロの手を伝わる。
サンジの心臓は、普通よりも明らかに速いスピードで動いていた。
「判る?俺の心臓…」
速くなってんだ
と、サンジは照れ臭そうに言った。
「どんなに可愛い女の子の前でだって、こんなにならないのにさ。緊張してんだ俺」
カッコ悪いだろう?
とサンジは笑う。
「でもさ」
サンジはゾロの手を自分の胸に押し当てたまま、もう一方の手でゾロの頭を撫でた。
「こんなカッコ悪くなるくらいに緊張するくらい、俺はゾロが好きなんだぜ?」
サンジの言葉に、ゾロは、はっと顔を上げた。
けれども言葉が見つからないようで、そのまま黙ってしまった。
サンジはそんなゾロの髪を撫でながら、じっとゾロを待つ。
ゾロはしばらく考えていたが、やがて口を開いた。
「俺は…もっと、てめぇを感じてぇ。唇とか手とかだけじゃなくて…もっと、身体全体で感じてぇんだ。てめぇを」
ゾロは、サンジのジャケットをぎゅっと握った。
「…俺は、てめぇのもんなんだって証拠が…キスとかじゃなくて、もっと、確実な証拠が、欲しい」
話しながら、ゾロはだんだんと自分の気持ちを理解していった。
ああ、そうか。
俺は…
「俺は。…てめぇの特別に、なりてぇ…」
ゾロはそう言ってから、何だか恥ずかしくなったので、目を伏せた。
「特別、か…」
サンジはそう呟くと、ふ、と笑った。
すると、何笑ってやがる、という表情でゾロが睨んでくる。
別にゾロをバカにしている訳ではない、とサンジは首を振った。
「いや、さ。ゾロのお願いがすごい可愛いなって思ったの」
「っ…」
サンジの言葉に、ゾロは思わず顔を赤くして。
そんなゾロに構わず、サンジは俯いたゾロの顔を上げさせた。
「俺だって、ゾロの特別になりてぇよ?」
サンジの手が、ゾロの頬をするりと撫でて。
「特別になろう、ゾロ」
サンジはゾロの唇に優しく、でも力強くキスをした。
そうして、ゾロの身体をゆっくりと押し倒した。