パラレル

□Secret Intimacy *
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部活終了のチャイムが鳴る。

ゾロは防具を片付けて、竹刀を抱えて職員室へ向かった。

面倒だと思いながらも、なぜかサンジの約束を守っている自分に半ば呆れながら、ゾロは引き戸を開ける。

「失礼しまーす」

「お、ゾロじゃねぇか」

入って一番に会ったのは、サンジではなくシャンクスだった。

「あ、シャンクス」

「またサンジか?」

そう聞かれて、ゾロは思わず苦笑する。

「まあ、な」

いるか?と聞こうとすると、サンジがこちらに向かってくるのが見えた。

「あ、サンジ」

そう言った途端、ぱかんとサンジに頭を殴られる。

「ってぇ…何すんだ!!」

「サンジじゃねぇ。サンジ"先生"だ。ったく、何度言ったら分かるんだ」

「教師らしくないてめぇが悪い」

「あ゙?!」

だんだんヒートアップしてきた二人に、シャンクスがまあまあと割って入る。

「んな怒るなよ、サンジ。糖分足りてねぇんじゃねぇの?」

ほら、とシャンクスはどこからともなくチョコレートを2つ取り出した。

それをぽん、と二人の手に置いて、

「用が済んだらさっさと帰れよ、ゾロ」

と言いながら、そのまま行ってしまった。

残された二人はポカンと立ち尽くしている。

「…シャンクスは、"先生"つけなくても殴られねぇんだな」

ぼそりと呟かれたゾロの言葉に、サンジははっと我に返った。

そして、もう一度ゾロの頭を叩いた。

「い゙っ!?」

「だから。シャンクスじゃなくてシャンクス"先生"だって言ってんだ」

少なくとも学校では"先生"をつけろ、と言ってから、ゾロを隣の部屋に連れて行った。


***


隣の部屋にあったのは、10個ほどの山になった紙の束で。

よく見れば、左端の紙には大きく『修学旅行』と記されている。

「…何をしろと?」

嫌そうな目でゾロがサンジを見ると、サンジはにやりと笑って言った。

「これ、修学旅行のしおりなんだけどよ」

「だろうな」

「全部綴じといてくれ。40人分」

あ、俺と副担の分も入れたら42人分か。

綺麗に頼むぜ。

終わったら呼びに来いよ、と言いながら、サンジは職員室に戻って行く。

一人残されたゾロは、大きくため息をついた。

サンジはいつもこうなのだ。

自分がやらなければならない面倒な仕事は、決まってゾロに押し付ける。

まあ、押し付けられる理由は、ゾロが授業中に寝るからなのだが。

ゾロはもう一度ため息をついたあと、果てしない作業に取り掛かり始めた。

ぱちり、ぱちり、とホッチキスで綴じながら、ゾロはぼんやりとサンジのことを考えた。

何だかんだと言っておきながら、サンジはゾロのことをよく分かってくれていると思う。

この罰を、部活のあとでいい、と言ってくれるのも、ゾロにとってはとてもありがたいのだ。

ゾロにとって、部活は何よりも大事なものだから。

まあ、逆にそうすることで確実にゾロを来させる、というのもあるのかもしれないが。
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