パラレル

□ちいさなこいびと
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サンジはゾロのところへ行くと、くいくい、とその袖を引っ張りました。

「…なんだよ」

ゾロが少し不機嫌そうに振り返りました。

「…こっちきて」

「なんで」

「いいから」

ぐいーっとさっきよりも強く引っ張ると、ゾロは立ち上がってサンジについて行きました。

教室の隅まで来ると、サンジは持っていたチョッパーマンをゾロに差し出しました。

「これ、あげる」

「…?」

不思議そうな顔のゾロに、サンジは続けます。

「だから…」

零れ落ちそうになる涙をぐっと我慢して、サンジは言いました。

「…だから、おれといっしょにいてよ」

ゾロは一瞬、はっとした表情になりましたが、
すぐにチョッパーマンのぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめて俯いてしまいました。

「ゾロ…ねぇ、ゾロぉ…」

サンジは、半分泣きながらゾロの名前を呼びました。

それでもゾロは、じっと黙ったままで。

いよいよサンジが本格的に泣き出してしまいそうになった時。

ゾロが何かを呟きました。

「ぇ…なに、ゾロ」

「…おれとはもう…なかよくしないんじゃなかったのかよ」

悲しそうなゾロの声を聞いて、サンジは今まで我慢していた涙が溢れてきました。

「そんなことないっ…さっきは、ちょっとそうおもってたけど…でもっ」

ぐすん、と鼻を啜って、流れる涙を拭って、サンジは言いました。

「おれは、やっぱり、ゾロがすきだから…」

だから、いっしょにいよ?

サンジのその言葉に、ゾロは顔を上げました。

その目の周りは赤く染まり、瞳は潤んでいます。

サンジはそんなゾロの顔を見て、びっくりしました。

まさか、ゾロが泣いているなんて、思ってもみなかったのです。

あんまりびっくりしたので、サンジは涙が止まってしまいました。

ゾロは涙目で、サンジを睨みつけました。

「…ばか」

「ばかっていうな」

「ばかぁ…もうなかよくしてくれないかとおもった」

そう言うと、今度はゾロの目から涙が出てきました。

ぷっくりとしたゾロの頬を、透明の涙の粒が伝っていきます。

「ゾロ、なかないで…」

「…ないてなんか、ねぇ…っ」

サンジが、ゾロの頬に流れる涙を、ちゅう、と吸い取りました。

「ゾロ、だいすき」

うん、と頷いたゾロに、サンジはにっこりと笑いかけて言いました。

「なかなおりのちゅうしよ?」

「ん」

小さい唇同士を重ね合わせると、ちゅっという可愛らしい音がしました。

唇が離れると、二人は照れたようにもう一度笑い合いました。

そこに、おやつの準備を終えたらしいナミが戻ってきました。

「みんなー、おやつよー」

ナミの言葉に、子どもたちがわーっと歓声を上げてナミの周りに集まってきます。

「おやつだって」

「うん」

「いこ」

差し出されたサンジの右手を、ゾロはきゅっと握りました。

そうして嬉しそうに手を繋いできた二人をみて、ナミも安心したように微笑んだのでした。


END

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