パラレル

□いつだって、傍に
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いつだって、傍に


しばらくサンジが前を向いて歩いていると、今度はゾロの方から視線を感じて
サンジは思わずゾロの方を向いた。

「ゾロ?」

「っ…!!」

いきなりサンジがこちらを向いたので、ゾロは驚いて慌てて前を向く。

「ねぇ、ゾロ」

「…んだよ」

「今、俺のこと見てた?」

「……」

ゾロは黙ったまま、じっと前を向いている。

けれどその耳が赤く染まっているのが、何よりの証拠で。

「ゾロも俺のこと見たかったの?」

「うるせぇ…」

いいだろ、たまには

小さく呟かれたその言葉に、サンジは破顔して。

ポケットの中の手を、ぎゅう、と握りしめた。

そのままゾロの腕に纏わり付くように身体を密着させれば
ゾロは頬を染めたまま、顔をしかめて。

「…歩きにくい」

「いいじゃん、たまには」

「……」

ゾロは諦めたようにため息をついて、何も言わずにサンジの手を握り直した。

そのまま二つの影は離れることなく、家路を辿ったのだった。


***


「…ん」

ふわりと懐かしく優しい香りに、ゾロは目を覚ました。

テレビを見ながら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

先刻までやっていたワイドショーは、野球中継に変わっていた。

何か別のものを見ようとゾロがチャンネルを回し始めると
サンジが飯だ、とゾロを呼んだので、ゾロはテレビを切ってダイニングに向かった。

今日の夕食は、温かいものが食べたい、と言ったゾロのリクエスト通りのおでん。

二人はきちんと手を合わせてから食べ始めた。

「…ど?」

「んまい」

いつも通りの会話。

でも、サンジは毎回ドキドキするのだ。

サンジの職業はコックだし、腕にもそれなりに自信はある。

最近では、メインの盛り付けを任されるまでになったのだ。

しかしそれでも、ゾロに食べてもらう瞬間は緊張する。

下手をしたら、料理長に新作を出す時よりも緊張しているかもしれない。

もちろん、ゾロが不味いと言ったことは一度もないし
サンジが作った料理を残したこともない。

そのことがまた、サンジを喜ばせた。

ふとゾロを見れば、口元に味噌がついていて。

くすりと笑って指先で拭ってやると、少しくすぐったそうにした。

そんなゾロに、サンジはこんなことを尋ねてみた。

「なあ、ゾロ」

「…ん」

「俺たち…いつまで一緒にいられるかな」

「…何、いきなり」

不思議そうに顔を上げたゾロに、サンジは変なことを聞いてしまった、と少し後悔した。

「…いや。何でもねぇ」

「……」

ゾロは黙って皿に残っているおでんを口に運び、おかわりの分を注ぎながら口を開いた。

「別に。考える必要ねぇんじゃねぇの、そんなこと」

「…え」

「今、俺はてめぇと居たくて、てめぇも俺と居てぇ。互いにそう思ってるなら、それで十分だろ」

大事なのは、いつか分かんねぇ未来より、今のことだろう?

と、ゾロはそう言った。

サンジはその言葉にしばらくきょとんとしていたが、やがてああ、そうだな、と微笑んだ。

「なあ、ゾロ」

「ん」

「好きだぜ」

「…おぅ」

少し照れて返事をしたゾロに、サンジは満足そうに笑った。


−こんなこと、ゾロには言わないけれど。

世界で一番ゾロを好きなのは、きっと俺だ。

これだけは誰にも負ける気がしない。

今までも、今も、これから先もずっと、傍に居るよ。

"今"ゾロと居たいっていう俺の気持ちは、変わることを知らないんだから。

そうしたら、ずっと一緒に居られるだろう、ゾロ?


END

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