短編・中編
□男前少女
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※紫原と幼馴染み
※中学生設定(学校は別々)
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帝国中バスケ部部室でいつものようにお菓子を頬張っているのは、
キセキの世代の一人である、ディフェンスの要‥紫原敦。
そんな彼には、ちょっと変わった幼馴染みが一人いた。
紫「んー…」
モグモグ‥
黒「紫原くん、どうかしましたか?」
紫「うわ、黒ちん居たの?」
黒「結構、前から居ました。…というか…“うわ”ってなんですか“うわ”って」
紫「だって黒ちん気配無さすぎだしー。つーか、いきなり驚かせるなし」
黒「………。もうそれは良いです。それより紫原くん、話を元に戻しますが‥どうかしたんですか?」
紫「ん〜?あー…名前ちんにあげるお菓子選んでんのー。」
黒「…名前ちんという方がどんな人かは知りませんが…紫原くんが大事なお菓子をあげるなんて…ご家族の方ですか?」
紫「いやー、名前ちんは幼馴染み。」
黒「…紫原くんに幼馴染みがいるなんて‥意外です。」
紫「んー‥そぉ?」
ガチャ…
緑「………む?…紫原!部室で菓子を食うなと何度言えば…!」
紫「うわー煩いのが来たし」
黒「緑間くん、こんにちは。」
緑「なっ…!?黒子!?居るなら居ると言うのだよ!!;」
黒「…緑間くんが入って来たとき、バッチリ目が合ったはずですが。」
ガサゴソ…
紫「んんー‥よし、名前ちんにはコレあげよーっと」
緑「はぁ……、紫原‥今度は何をしているのだよ。」
黒「幼馴染みさんにあげるお菓子を選んでいるそうです。」
緑「は?幼馴染みだと?」
紫「うん。ちょー可愛いの。ミドチンには会わせてやんないけどね〜」
緑「べっ…、別に構わないのだよ!」
紫「あー早く休みになんないかなー」
黒「ここまでくると…どんな人なのか気になりますね…」
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それから時は流れ…
場所は公園、噴水前。
そこに、綺麗な黒髪をなびかせて佇む者が一人いた。
彼女は清楚な雰囲気で、どこぞのお嬢様かと思う程に品があり、
その立ち姿も見とれるほどに凛としている。
そんな彼女が物思いにふける様子で「ほぅ…」と溜め息をつくものだから、周りの人たちは思わず足を止め、息をのんでそれに魅入ってしまった。
…と、周りが静寂に包まれる中‥ひとつのノンビリとした声が響き渡った。
紫「名前ちん、お待たせ〜」
『っ!!敦…!』
紫「名前ち〜ん」
…感動の再会、と言わんばかりに紫色の巨人が両手を広げて彼女の方へ走って行く。
そのまま感動のハグでもするのか…と、なんだよ彼氏持ちかよ…と、周りの者はスゴスゴとその場を離れて行った。
紫「名前ち〜んっ」
紫原が彼女に抱きつこうとする。
そんな紫原に答えるかのように名前はニコッと笑って…
『てんめェェェェ!!敦ぃぃぃぃぃ!!』
ゴスッ!!
……飛び蹴りをかました。
蹴りがクリーンヒットしたのか、腹を抱えて悶える紫原。
そんな様子を見下すように立つ名前。
…異様な光景である。
紫「名前ちん…いきなり蹴るとか‥ヒドすぎ…」
『ヒドい…だと?テメェ今何時だと思ってやがる。』
紫「え、えーと‥1時…?」
『そうだよ1時だよ。…んで?待ち合わせ時間は?』
紫「………12時…」
『だよなぁ?私はここで1時間待ってんだよ。そのくせお前は急ぐ様子もなく現れやがって…。……敦、私に何か言うことは?』
紫「……んー…名前ちん、ごめん…」
『……ん、よく言った。屈め、敦。』
紫「??」
スッ…
ワシワシ…
紫「!!」
彼女に言われた通り身を屈めた紫原。
そんな彼の頭を名前はワシワシと撫で始めた。
『フッ…久しぶりだな、敦。』
紫「っ!!名前ちんっ!」
ガバァッ!
『おおっ?…ったく…相変わらずだなー、お前…』
紫「うー…名前ちんも相変わらず…黙ってれば可愛いのに…」
『“黙ってれば”は余計だ。』
……そう。名前の家は5人兄弟。その中で名前は唯一の女の子。
小さい頃から男兄弟に囲まれて育ったため、性格は誰よりも男らしく育ってしまったのだ。
兄貴分な性格で面倒見のいい名前に、紫原がなつき、小学校時代までいつも一緒にいた2人。
紫「…つかなんで、名前ちん帝光に来なかったのー?連絡もとれねーし。」
『ハハ、わり。敦の自立のために‥な、…いい加減私離れしてもらわねーと。後々困るのはお前だからな。』
紫「むー…俺、そんなに名前ちんにベタベタしてねーし。同じとこが良かったー」
『何を言うか。いつも私の後ろをヒヨコのようについて来てたくせに。……で?帝光ではどうだ?上手くやっていけてるか?』
紫「んー…普通。」
『そうか…じゃあ友達は?できたのか?‥部活は?何に入ったんだ?』
紫「…なんか名前ちん、ちょー過保護。」
『あ、ああ…久しぶりだから‥つい…』
紫「別にいいけどー。あ…はい、名前ちん」
『ん?』
紫「まいう棒〜コンポタ味。名前ちん好きでしょ?」
『おぉ…サンキュ。……ベンチにでも座るか?』
紫「んーん。芝生がいい。」
『んじゃ…あっちか。行くぞ、敦。』
紫「ん、わかった〜」
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in芝生
ゴロン‥
紫「ふぁ〜‥、ん…名前ちんもおいで〜」
『お、おう…』
ゴロン…
紫「……………。」
ギュウ…
『…………敦?』
紫「ん〜‥名前ちんの匂い…」
『敦…、』
紫「…なに?」
『お前…さ、高校はどこに行くんだ?』
紫「……え〜?知らない。でも…名前ちんと一緒がいい。」
『そうか…でも…私、敦とは別々になる気がするなぁ…』
紫「は?なんでそんなこと…」
『なんとなく。自分から離れておいて何だけど…どんどん敦が遠くに離れて行ってしまう気がして…な。』
紫「…俺が名前ちんから離れて行くワケないじゃん。」
『…はは、嬉しいこと言ってくれるな、敦。じゃ、約束な?』
紫「ん。」
ゆっくりと互いの小指を絡ませる2人。
『ゆびきりげんまんっ』
紫「嘘ついたら〜」
『針千本のーますっ!』
「『ゆびきった!』」
『…よし!約束したからな!』
紫「名前ちんって…時々すっごく女の子っぽいよね〜。そういうとこ、ちょー可愛い。」
『なっ…!?///敦!!』
紫「じゃ、おやすみ〜」
『っ……//、ったく………ああ、おやすみ!』
(まだ来ぬ未来に思いを馳せて)
(私たちは眠りについた)
(また一緒に笑い会える日々を夢見て…)
…幼馴染み離れができてねぇのは、案外私の方なのかもしんねーな…。
-end-