長編

□文化系少女
1ページ/6ページ



図書室の一番奥、窓側。



それが私の特等席。



だけど最近、特等席に座る私の前に…




『‥…………………。』



黒「……………………。」





……なんかいる。




―――――――――





私たちが出逢った日――



時は数日遡る。



その日、私はいつものように図書室で本を開いていた。




ペラ…



『…………。』



人気の少ない図書室にページをめくる音が響く。



ペラ…



『……………。』



黒「あの…」



………ん?




………って…、



『わぁぁぁっ!?;』



黒「しー」



『あ…ごめんなさい…』




突然前から声がして、顔を上げたら…


透き通るような水色の髪をした男の子が座っていた。



いきなり目の前に現れた男の子に思わず声をあげると、彼は人差し指を唇に当てて「静かに」というジェスチャーをした。



危ない危ない…ここが図書室だってこと忘れてた…



………っていうか、




『いつのまにココに?』



私は疑問に思ったことを小声で彼に訪ねる。



本のページをめくる音すら大きく聞こえるようなこの空間で…人が来ても気づかないなんて…



私…どんだけ集中してたんだろ?




黒「あなたが来る前から居ましたけど…」




………………え?



『えええぇっ!?;嘘!?』



黒「嘘ではありません。」



『え…全然気づかなかった…あの、えっと…なんかごめん…』



黒「いえ。慣れてますから」




慣れてる、かあ…


『(確かに、これだけ気配というか…存在が薄かったら私じゃなくても気づかないでしょ。)』




などと失礼きわまりないことを考えていると…


彼が静かに口を開いた。



黒「バスケ……好きなんですか?」



『へ?』


突拍子もない彼の質問に、私は唖然として彼の視線の先をたどる…



…そしてその視線がたどり着いたのが私の手元―――


私が読んでいた本だった。



ああ…そういえば今、バスケ部の青春ストーリーの本を読んでたんだっけ…



『……いや、これは何となく手に取っただけで…バスケに興味があるわけでは…――(黒「よかったら練習見に来ませんか」……は?』



練習?



そう思って顔を上げると、無表情ながらに目をキラキラさせた彼がいた。




黒「僕、バスケ部なんです。」



『へえ…』



なんか意外…文化部っぽいのに…



黒「だからバスケに興味があるなら、ぜひ見に来て下さい。」



『いや、あの…だから…』



黒「ちょうど今から部活なんで…あ、ちょっと見学の許可を貰ってきますね。名前さんはここで待ってて下さい。」





『あ、ちょっと待っ…!?;』




ダッ!




『…い、行っちゃった…;』



結局断われなかったよ…;



あの子‥意外と強引なんだな…




……っていうか…




………あれ?





『……なんであの子…私の名前知ってるんだろう…』






-
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ