長編
□文化系少女
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図書室の一番奥、窓側。
それが私の特等席。
だけど最近、特等席に座る私の前に…
『‥…………………。』
黒「……………………。」
……なんかいる。
―――――――――
私たちが出逢った日――
時は数日遡る。
その日、私はいつものように図書室で本を開いていた。
ペラ…
『…………。』
人気の少ない図書室にページをめくる音が響く。
ペラ…
『……………。』
黒「あの…」
………ん?
………って…、
『わぁぁぁっ!?;』
黒「しー」
『あ…ごめんなさい…』
突然前から声がして、顔を上げたら…
透き通るような水色の髪をした男の子が座っていた。
いきなり目の前に現れた男の子に思わず声をあげると、彼は人差し指を唇に当てて「静かに」というジェスチャーをした。
危ない危ない…ここが図書室だってこと忘れてた…
………っていうか、
『いつのまにココに?』
私は疑問に思ったことを小声で彼に訪ねる。
本のページをめくる音すら大きく聞こえるようなこの空間で…人が来ても気づかないなんて…
私…どんだけ集中してたんだろ?
黒「あなたが来る前から居ましたけど…」
………………え?
『えええぇっ!?;嘘!?』
黒「嘘ではありません。」
『え…全然気づかなかった…あの、えっと…なんかごめん…』
黒「いえ。慣れてますから」
慣れてる、かあ…
『(確かに、これだけ気配というか…存在が薄かったら私じゃなくても気づかないでしょ。)』
などと失礼きわまりないことを考えていると…
彼が静かに口を開いた。
黒「バスケ……好きなんですか?」
『へ?』
突拍子もない彼の質問に、私は唖然として彼の視線の先をたどる…
…そしてその視線がたどり着いたのが私の手元―――
私が読んでいた本だった。
ああ…そういえば今、バスケ部の青春ストーリーの本を読んでたんだっけ…
『……いや、これは何となく手に取っただけで…バスケに興味があるわけでは…――(黒「よかったら練習見に来ませんか」……は?』
練習?
そう思って顔を上げると、無表情ながらに目をキラキラさせた彼がいた。
黒「僕、バスケ部なんです。」
『へえ…』
なんか意外…文化部っぽいのに…
黒「だからバスケに興味があるなら、ぜひ見に来て下さい。」
『いや、あの…だから…』
黒「ちょうど今から部活なんで…あ、ちょっと見学の許可を貰ってきますね。名前さんはここで待ってて下さい。」
『あ、ちょっと待っ…!?;』
ダッ!
『…い、行っちゃった…;』
結局断われなかったよ…;
あの子‥意外と強引なんだな…
……っていうか…
………あれ?
『……なんであの子…私の名前知ってるんだろう…』
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