企画部屋
□かなた様リクエスト
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あたしは地味女を先輩組から遠ざけるために、行動を開始した。
「(あの女は美少女好きみたいだから…それを利用するしかないわね…)」
あたしはこの間交換した地味女(自己紹介はされたけど、名前を覚える気は無し)の連絡先に電話を掛ける。
プルルル…
(『もしもし、名前ちゃん?』)
「あっ、もしもし〜?いきなりすみませぇん…」
(『全然いいよ!何かご用?』)
「あ、あのぉ…実は相談したい事があってぇ…今から会えますかぁ?」
(『もちろん!丁度仕事終わったとこだし…どこで待ち合わせしよっか?』)
「えっとぉ…じゃあ、駅前の喫茶店に30分後に来れますかぁ?」
(『駅前……あぁ、あそこか……うん、余裕!じゃあ、30分後ねー!』)
「はぁい!よろしくお願いしまぁす!」
ピッ
「…ふう…」
これで、準備は整ったわ…
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[私side]
名前ちゃんに呼ばれて喫茶店にやって来た。
『(この時間帯だと、結構人少ないなぁ……っと、名前ちゃんは……)』
「せんぱぁい!こっちですぅv」
『あっ、名前ちゃん。来てたんだね…待たせちゃったかな?』
「いえ!あたしも今来たところなんでぇ。」
『そっか!じゃあ、何か頼む?』
「ん〜、じゃあ……あたしは紅茶とモンブランのセットで!」
『じゃ、私は……イチゴタルトとコーヒーにしよっと。……すみませーん!』
食べたい物を即決して店員さんに注文する。
今日はイチゴタルトの気分なんだぜ!
『あ、それで…名前ちゃん、相談っていうのは?』
「それがあたし…お芝居に行き詰まっててぇ…」
『お芝居か…。ドラマの撮影?』
「はい…、親しかった人に冷たくするシーンがあるんですけどぉ…そこがどうしても上手くいかなくて…」
『ふむふむ…具体的にはどんな役?』
「えっと………に、二重人格の……女子高生…」
『おお…!なんかすごい役…。つまり、二重人格のヒロインとして、二つの役の演じ分けが上手くいかないって事かな?』
「は、はい!…それで、図々しいんですけどぉ…先輩にお手本を見せてほしくて…」
『私に?』
「はい!先輩演技上手そうだなって思ってぇ。」
『ふふふふ…美少女の頼みとあっては断れないなぁ』
「本当ですかぁ!?やったぁv」
『うん、でも相手役はどうしようか…』
「あっ、それならぁ…先輩、嶺ニ先輩たちと仲良かったじゃないですかぁ」
『レイちゃんたち?』
「親しい人に冷たくする役だからぁ、丁度良くありません?」
『レイちゃんたちかぁ……うん!面白そう!』
「自然なリアクションが見たいし…嶺二先輩たちには、お芝居だってこと黙っておきましょうよぉ〜」
『ふふっ、いいね!じゃあ、この女優・名前に任せなさい!』
「きゃっv頼もしい〜」
『それほどでも〜。………ん?…あっ、ケーキ来た!美味しそう!』
「本当だぁ〜v」
それから、私たちは美味しいケーキ(タルト)を堪能して喫茶店を出ました。
……いやぁ、可愛い後輩に頼られるって……いいね!
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[名前side]
今日は地味女に呼ばれて、シャイニング事務所の、あまり使われていない会議室へとやって来た。
先輩組も来るらしい。
「(って事は…あの話の事を実行してくれる気なのかしら。)」
フフッ…バカな女よね。自分から悪役に徹するなんて。
ドラマとか二重人格のヒロインとか、全部でっち上げなのに。
ガチャ…
『あっ!名前ちゃん!早いね!』
「先輩!今日は…その…、」
『うん!今日は一日冷徹女になるぜ!少しでもお芝居の参考になるように頑張るね!』
「先輩…!!」
『いやー、それにしても…あの4人を呼び出すのは大変だったよー。私が直接呼び出したら、プチドッキリのことがバレそうだから、社長に根回ししてもらってさー。“強制懇親会”という名目で呼び出してもらったの。』
「へ、へぇ〜」
社長にって…、何者なのよこの女…
コンコン…
『あっ、来たみたい…』
「(いよいよね…)は〜い!」
ガチャ…
嶺「失礼しま〜す……、ってアレ?あだ名!?それに、後輩ちゃんも!」
藍「え?名前!?」
蘭「まさか懇親会って…このメンバーでやんのか?……」
カ「……なぜこの顔ぶれで懇親会を行う必要がある?」
嶺「まあまあ、…シャイニーさんはいつでも突発的だし!……それにほら!あだ名とこうやってお話しする機会って、最近なかなか無いんだから…楽しもうよ!」
藍「それには僕も同意。嫌なら出てけば?僕と名前以外。」
蘭「ハッ、むしろ俺と名前で出ていってやるよ。」
嶺「ちょっと待ったランラン!ほら、お菓子とか…食べ物がいっぱい置いてあるよ!!シャイニーさんからじゃないのかなぁ!」
蘭「……チッ…。」
「あっ!あのぉ…あたし、お茶淹れますねぇ!」
嶺「おっ!後輩ちゃん、気が利くね〜!ありがとっ!」
藍「あ…名前、ケーキとかクッキーとか…いろいろあるよ?何食べる?」
『…………。』
藍「……名前…?」
『…………いらない。』
藍「……あ…そ、そっか…」
嶺「じゃあじゃあ、唐揚げ食べる?オニギリやサンドウィッチもあるよ!」
『……うるさいなァ。』
嶺「……えっ……あだ名…?;」
『っていうか大体、なんなのそのテンション。…ウザいんだけど。』
嶺「えっ!?;あの…本当に…どうしちゃったの、かなぁ…?;」
藍「……名前…?;」
『は?年下のくせに、何で呼び捨てなワケ?普通“さん付け”でしょ?そんなことも分からないの?』
藍「っ…、」
蘭「おい、名前…何か変なもんでも食ったのか…?;」
『食い意地張ってるアンタと一緒にしないで。』
蘭「!?」
カ「お、お前…何を…、」
『黙れ愚民。』
カ「なっ…!?;」
「(う、うわぁ…)」
確かに、冷徹女を演じてくれとは言ったけど…
「(本気出しすぎでしょ…)」
見てるこっちがドン引きするレベルだわ…。
…ま、まあ…こっちからしてみればイイ傾向よね!
この隙に好感度上げなきゃ!
「先輩たち、お茶が入りましたよぉ〜」
嶺「…………。」
藍「…………。」
蘭「…………。」
カ「…………。」
「わぁ、ありがとう、名前ちゃん!」
地味女は、あたしの事は冷たくする対象には入れてないらしい。
ニコニコとお茶を受けとる地味女を見ながら、そう考えていたら…
ギンッ!
「っ!?」
殺気のこもった目で藍に睨まれた。
一体なんだって言うのよ…!
『……大体さぁ…、懇親会だって言うから来てみれば…6人中4人が男ってどういうことなの?女の子連れて来いや。』
嶺「あだ名…、」
『それか、何?女装して出直して来る?』
藍「名前…っ!どうしちゃったの!?この女に薬でも盛られた!?」
『名前さん。』
藍「え…」
『名前、さん。何度言ったら分かるの?』
藍「名前…、さん…。」
『それでよし。』
蘭「おい!名字とか言う奴!テメェ、名前に何しやがった!!」
「えっ、」
『名前ちゃんに言い掛かりするのは止めてくれない?……厨ニ病のくせに。』
蘭「はぁっ!?;」
カ「貴様…本当に名前なんだろうな…」
『は?貴様?……誰に向かって言ってんのよ。アンタこそ何様なワケ?』
カ「なっ…;」
『あーあ。すっごく時間のムダ。……行こ?名前ちゃん?』
「えっ、あ…はあ…」
あたしは地味女に手を引かれるまま会議室を出た。
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『ふい〜…。どうだった?名前ちゃん?少しは参考になったかな?』
「は、はい!とっても!」
正直、引くぐらいね!
『よかった〜。あ、私これから仕事なんだよね。よかったらレイちゃん達の様子…見て来てくれるかな?』
「それはもちろん!」
言われなくとも行くわよ!
『ありがとう。演技とはいえ、散々ヒドイこと言っちゃったから…傷付いてなきゃいいけど。…ま!謝るのは直接言わなきゃだと思うし…後日ネタバラシして謝るよ!…あっ、名前ちゃんはなにも気にしなくていいからね!』
「先輩…優しいんですねぇ…」
『えへへ〜…それほどでも!…じゃあ、またね!』
「はい!」
あたしは地味女の背中を見送ると、会議室へと翻した。
フフッ…
邪魔者は消えたし……舞台は整ったわ。
ヒロインが活躍するのはこれからよ。
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