novel
□副長様のおつかい
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「ふっふふ〜ん」
私はいつもの様に、土方さんの部屋の前でも平気で鼻歌を歌って廊下を歩く。
「琳」
低い声が私の足を止めた。
ときどき彼の虫の居所が悪いと『副長補佐としての自覚が足りねぇ』だとか『静かに歩くこともできないのか』とか、他の事もその時に乗じて色々と言われる。
まさか今日もそれなのか・・・。
この前怒られたばっかなのに。
ちなみに何で怒られたのかと言うと、廊下で滑って障子を破ったから。
でもあの時は総司だって悪かったのに、さっさと逃げちゃって結局私だけ被害を受けるという展開。
そんな事を色々と考えながら、私は部屋の襖に手をかけた。
「お呼びでしょうか…」
「あぁ…って何て顔してやがんだ」
今の私はきっと絶望に満ちた顔をしているのだろう。
でも考えてほしい。
この状況、誰だってこんな顔になるはずだ。
「別に説教しようって訳じゃねぇって」
「へ?」
さっきとは打って変わって私は今超間抜けな顔をしているはずだ。
だが考えてほしい。
呼び出されて説教じゃないと言われた時…以下同文。
「悪ぃんだが、街に使いを頼まれてくれねぇか」
「街に?」
「あぁ、墨が切れそうでな何でもいいが あまりに使いにくそうなのはやめてくれ」
「お使い…」
じーっ
「……」
じー
「…分かった、三つまでだぞ」
「いってまいります!」
何が三つまでかっていうとそれは、ずばり菓子の事!
最近出来たお茶屋さん、
気になってた所です。
「ふっふふーん」
先ほどよりも声高らかに鼻歌中。
すると、廊下の角から人影が現れた。
ニヤッ
「―く〜ん!」
「遠慮する」
「ちょっと!まだ何も言ってないじゃん!」
「いや…お前の事だから、探し物を手伝ってくれだの街に着いてきてくれだの、そんな事だろうと思ったのだが」
「……間違ってはいない」
「俺はこれから刀の手入れが―…」
そう言って一君は私の横を通り過ぎようとする。
「ちょっ、待って!今回はいつもとは違うの!!」
「…違う?」
歩き出した彼は、はたと立ち止まる。
「今日は、なんてったって土方さんのお使いなのだ」
「副長の!?」
言葉と同時にこちらに振り返る。
「そう、『墨が切れそうでな、街に使いを頼まれてくれねぇか?斉藤と』って」
「副長が、俺に…?」
「うんっ……あ、でも一君は刀の手入れしなきゃいけないんだったっけ、あーそれじゃ仕方ないよねー」
「……も……く」
「え?」
「俺も行く」
「よしっ行こ」
はぁ…なんかだんだん心が汚れていく気がする…。
ま、いっか