短編〜土方さん&平助〜

□モテる男はここが違う
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「土方さんて…、何でモテるのかなぁ」



私はふと呟く。




今は、広間に私、神崎琳と総司、平助、新八がお茶を飲みながら、だらだらしているところだ。





「やっぱ顔じゃね?」






「平助!男は顔じゃねぇ!そうだろ!?総司!」









「芸者さんなんかは大体顔で判断するよね」






「やっぱ顔かぁぁぁぁ!!ちくしょぉぉ!」



「新八っつあん、ちょ…!落ち着いてって!」





絶叫する新八は放っておいて、話を進める。









「顔が綺麗なのは認める。でもさぁ…、なんか土方さんって残念じゃない?」



「残念?それってどういう事?」


「なんていうかさぁ、色々残念じゃない。性格とか」



私は首をかしげる平助に分かりやすく説明しようと頭の中を回転させる。





「総司、大丈夫か…?」

正気に戻った新八が苦笑いを浮かべてそんな事を言うもんだから、何があったのかと総司の方を見る。




「くくっ…、はぁ…はぁ、大丈夫だよ…!」



総司は苦しそうにお腹を抱えている。




「ふっ…、ねぇ琳?もっと具体的に言ってあげないと平助分かんないよ」


総司…。







楽しそうね…。






「何ていうかさ、あの顔を生かせてないのよね」




「性格が駄目って事?」





「んー、駄目じゃないんだけど…、『あぁー…、はぁ…』って事」


「わっかんねぇよ!」







「いい?顔が良くても、行動とか考え方とか喋り方で幻滅って事だよ」





「あぁ〜、なるほどー…、なんとなく分かったかも」





総司の補足説明で平助も理解してくれたみたいなので本題に戻る。





「たとえ初対面だとしても、あの人なんかは性格が滲み出ちゃうと思うのよね」






「じゃあなんで姉ちゃん達に人気あるんだ?」





「そこなんだよ、問題は」








「そんなん仕事してる土方さんを見たことねぇからじゃん?」




「いやいや、だってね?この前島原に行った時なんか芸者さんが色々話してくれてんのに『…。そうか』で終わったんだよ」




「終わりかい!って思ったね」





「でもよぉ、斉藤もそんな感じだろ」




「一君は恥ずかしがり屋だから、あれはあれでモテるんだよ」







「『きゃー!かわええわぁ』みたいな」





「そうなんだ…」

平助は微妙な顔で相づちをうつ。






「なのに何で人気あるのかなぁ。全く分からない」




「まぁよく考えてみれば、女にしたら土方さんみたいな人って嫌、って思いそうだよな」






「じゃあ左之さんはどうなんだ?」






「左之は文句のつけようがない。同じくこの前島原に行った時、二回目かなんかに呼んだ芸者さんがいたわけ。そしたら左之がね、『かんざし変えたのか?似合ってるぜ』って言ったの」


「私思ったね。なんて男なんだ左之!恐ろしいっ!って」




「すげぇな…、左之」





「まぁ左之さんなら言いそうだけどね」





「あぁいう人がモテるんだよ。なのになぜ…」



「島原の人達の見る目がないだけじゃない?」


「んー…、そうなのかな」


その時、外で誰かの声が耳に入った。






「土方さんじゃない…?」

私達はゆっくり襖を開けた。顔だけ半分出して声がする方に向ける。




「千鶴と土方さんじゃん」



「なんか、怒られてるね」





「また怒ってんの…?」

土方さんは厳しい顔で千鶴ちゃんに向かって何か言っている。






「いいか、千鶴。お前は隊士達にとって、ただでさえ目立つ存在だ。軽はずみな行動はするんじゃねぇ」






「……はい」







(もうちょっと言い方があるでしょ…。千鶴ちゃんだって事情があるのに…)













「………ろくな情報が入って来なくて焦るのも分かる。」



「だが、綱道さんは俺達が必ず探し出してやるから、一人で変に気負うんじゃねぇよ」




土方さんはさっきと打って変わって、優しい笑顔を向けていた。







「…はいっ、ありがとうございます…!」

千鶴ちゃんは、とっても嬉しそうに笑った。






「よし、んじゃあ俺の部屋まで茶入れて来てくれるか」


「あっ、はい!」




「いつも通りうまいのを頼む」


「……はいっ!」







千鶴ちゃんはぱたぱたと駆けて行った。
















「「「「………」」」」






「ふ〜ん」








「ん?お前ら…、四人で顔出して何してやがんだ」






「そういうことですか」



「そういうことだな」



「憎たらしいよね」





「はぁ?何の事だ?ってか総司!てめぇ…」




じーっ


「な、なんだよ!その目は…!」











土方歳三がモテる理由―。



―そういうことでした。



→あとがき

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