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□神様は残酷な天使
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神様は残酷な天使

1.神様は遊び人

街中の喫茶店に、とても美しい少女がいた。いや、女性というべきか?

白い肌は透明感があり、大きな目は長い睫毛に縁取られている。
ピンク色の唇に浮かべる微笑みは、どこか妖艶。
でも清潔かんのある、整った顔立ち…

長くてサラサラの栗色の髪は、細い絹糸のようで、一本も絡まらない。


とにかく美しい人。
年は美少女か美女、どちらで形容するか迷うくらいの年頃。


彼女の仮の名は 清瀬 美華。
職業、神様。
…衝撃的でしょ!?

店内に1人の男性が入ってきた。彼もまた美しい顔立ち。

「ミカ、遅れてごめん」
そう言って彼はミカにキスをした。

「いいよ。今ので許してあげる。」

本当のところ、彼女は彼の施したキスに何も感じなかった。
彼に対する彼女の関心は、非常に薄い。いや、ないに等しい。

じゃあなぜ彼女は彼と時を共にするのか?

実は彼女、ほぼ仕事をしなくてよいのだ。
仕事は中級の神々がする。彼女はこう見えて神界では随一の神力を持つ女神なのである。

彼女は究極の遊び人。今現在10人の美男と同時に付き合っている。

「ミカ?」

「あ、ごめんね。ぼーっとしてた…」
長い睫毛で優雅に瞬きして見せる。

「他の男のことなんて、考えないでね。」

「そんなことあるわけないでしょ?私が好きなのは拓海だけなんだから。」
優しい笑みを作って…

「ミカ、好きだよ。」

男は単純。このくらいですぐに落とせる。

甘い言葉で相手をメロメロにするのが、彼女のマイブーム。

「私も、少しあなたに引かれてきたかも…」
わざとじらすと、男はもうイチコロ。

「ごめん、もう行かないと…」

コーヒーをのみ終えると、彼女は立ち去ろうと席をたった。

すかさず拓海は彼女の手をつかみ、抱き寄せた。

神様は恋なんてしない。
無意味な行動に心の中でせせら笑いながらも、清楚な美人を演じ通した。

それ以来神様は拓海に会わなくなった。
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