*

□分からない
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…ーーーー分からないんだ。











―――
――――

「スマートっち!」


聞き覚えのある声がして振り向くと想像通り僕を見つめる女の子の姿。

「ピアニっち」

そう、彼女はピアニっち。同じ音楽科の知り合い。

「どうしたんだい?」

「あのね!今度ミュージックカフェでお茶会をするんだけど、スマートっちもどうかなって…」

ああ、まただ。

彼女はよく僕を誘いに来る。


はっきり言って分からない。何を考えているのだろうか。
僕なんか誘わなくてもいいはずなのに。

「スマートっち…?」

ピアニっちに声をかけられ、ふと我にかえる。

「あ、ご、ごめん。
僕はやめておくよ」

「えっ、どうして…!?」
「どうしてって…」

どうして?その質問はおかしいんじゃないかい?
君は『どうかな』って聞いたんだよ?

「僕なんか居ても居なくても一緒だろ」
「そんなことないよ!!!」

彼女は僕の目を見つめ、悲しそうな顔で怒ってきた。

「どうしてそんなこと言うの!?
スマートっちは私の大事なたま友だもん、居なきゃいけないよ!!」


ーーーー…やっぱり分からないな。

僕と君はそんなに親しくないはずじゃないか。
会って間もないしね。

「君は僕のことを全然知らないだろ?
たま友なんて言える仲じゃないよ。」

「時間じゃないよ。
それにこれから知っていけば良いじゃない。
確かに私とスマートっちは会って間もないし、知らないこともたくさんあるけど…
だったら教えてよ、スマートっちのこと。」

そう言い、彼女は微笑んだ。


そんな彼女が、僕は輝いて見えたんだ。



「…分かったよ」

「本当!??」

「その代わり、君のことも教えてね」

「うん!!」





君のことをもっと知りたい、
そう思ったんだ。




end

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