短い夢
□夢の話
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とある酒場を貸し切って
私の昇格祝いが行われていた。
私は今日も言われた通りの事をして
生きてるだけ。生かされてるだけ。
「毎晩同じ夢を?」
不思議な体験ですね、と同僚のたしぎは眼鏡をかけ直した。
「そう、同じ夢。まぁ…ある人と買い物をしてる夢なんだけどね」
「買い物…それはそれは楽しそうに。」
私はそう言ってカクテルの氷をカランと鳴らした。
「でもね、暫く経つとその人が、一時間経ったらまた会おうって言うの」
たしぎは意味がよく理解出来ない様で首を少し傾げる。
「可笑しいと思わない?」
「名前さん…それってつまりどうゆう…あ!」
たしぎも漸く理解した様でグラスをコトッとテーブルに置いた。
「そう。“何処で”とは約束してなかったから結局は会えないの」
「変わった夢ですね。毎晩それを?」
「うん。私も起きてから気が付くの。またちゃんと約束してなかったって」
「昇格おめでとう、名前ちゃん」
「あ…ヒナさん。有り難う御座います」
「たしぎちゃん。スモーカー君が探し回っていたわよ」
「えぇっ!」
失礼します、とたしぎはスモーカーさんの元へ走り去って行った。
「もう、スモーカー君ったら部下の扱いが荒いんだから…」
ヒナさんはそう言うと、煙草に火を付ける。ヒナの形の良い唇から吐き出される白い煙を眺めていると、ヒナさんと目が合った。
「ヒナ、心理学を少し学んだ事があるんだけれど…」
「心理学、ですか?」
「ごめんなさいね、盗み聞きするつもりは無かったのよ。でも名前ちゃんがよく見るって言ってた夢」
それって、とヒナさんが呟く。
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