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□フルーツの魔法
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 「…あの、岬君。」


 「なになにベリーちゃん?」


 「そろそろ離してくれないかしら?」


周りの方々の視線が痛い、非常に痛い。

今、私の背中には彼の腕が回っていて、背中は見えていないはずなのに、その視線が突き刺さるようだ。


 「…ベリーちゃん、俺とくっつくのは嫌?」


 「…っ、」


上目づかいで、私を見上げる彼。

しゅんとしている所為なのか、普段より一回り小さく見える。

彼は、岬君は、狡い。

こういう仕草に私が弱いって知っていて、わざとこんな言動をする。


 「俺っちはー、ずっとこうやってベリーちゃんとくっついて居たいなー。」


 「こ、こういった事は白昼堂々と行うような行為では無いと思うけれど?」


 「えー、でも俺っち、ベリーちゃんが慌てるところ見るの好きなのに…。」


 「え?」


 「だってー、そういう時のベリーちゃんって、可愛いっしょー!!」


 「…ば、馬鹿っ、それより、これを片付けなくっちゃ…!!」


火照った顔を隠すように、私はその場にしゃがみこむ。

私が作って来たのは、レモンの蜂蜜漬け。

ありきたりだけど、初心者なりに一生懸命作ったのだ。

それがたとえ自己満足だとしても、何か、彼の役に立ちたくて。


 「これ、どうしようかしら…。」


 「俺っちは別に食べられるけどねっ!!」


 「駄目よ、衛生上良くないわ。」


 「えー、そんにゃあ…。」


 「…クスッ、」


本当は、汚れても食べると言ってくれた彼の優しさが、嬉しかった。

でも、今はまだ、それを上手く表現する事が出来ない。

素直になれない私でも…貴方の魔法で、可愛い女の子になれるかしら?



フルーツの




 ((それはきっと))


 ((甘い甘い恋の魔法))



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この連載で最短の執筆時間でした、その結果がクオリティに比例してますねww
 

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