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□容赦ない魔王様
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春、新入生が入ってきた。
私は前で挨拶したからまだ学校生活に慣れない一年生達によく声をかけられる。
「あの、A子先輩って何部に入ってるんですか?」
「あー!それ聞きたかったです!自分達まだどこに入ろうか決めてなくて…」
購買部ですれ違った一年生の男子と談笑していると突然投げかけられた質問。
なんか可愛いよね、小学生あがりの子って女の子も男の子も。下の兄弟が出来たみたい。
『テニス部のマネージャーだよ』
「え、あの強豪の…ですか?」
『うん、常勝のテニス部です』
そう笑顔で言ってこの子たちがテニス部は言ってくれたら将来の三強みらいになるのかなぁ〜なんて思ったりして。
「へぇ…あ、彼氏とかいるんですか…?」
『え、うん。い「いるよ、ここに」精市っ!』
いつの間に現れたのか精市は私の腰に手を回して私の隣に立っていた。
「え…」
一年生、すごい蒼白な顔してるんですけど…幸村さん、どんな顔してんですか…
怖くて見れないです…
「君達テニス部入るの?」
「え、あ、はいっ!」
「そう、じゃあ今日の部活見学に来てね。部長として待ってるから」
そう精市が言うと一年生の顔は余計に蒼白になった。
ぶちょっ…!!?とすごい驚きようで思わず笑いそうになった。
「あ、言っておくけど…」
すでに一年生達に背を向けてどこかに連行される態勢になっていた私を放置して精市は笑顔で言った。
「A子に手出したら、速攻退部ね。あと、逃げないでね」
そう言うと私は精市に手を引かれて廊下をずんずんと進む。
途中で赤也にすれ違って助けて!、と手を取ったらすごい勢いで振り放された。しかも、その顔は青ざめていた。
おいおい、どんだけ精市怖い顔して歩いてるの?赤也泣きそうだったんだけどっ!
勢いよく美術室に放り込まれて鍵をかけられた。
「A子も大胆な行動するようになったんだね?」
『…何、精市は学校じゃ嫉妬しないタイプだと思ってた。』
「何をそんなに怒ってるのさ」
『別に怒ってないよ、ただ大人気ない行動はやめて』
「大人気ないって?」
『後輩の前で嫉妬するとか』
「してもいいでしょ、俺だって男だよ」
淡々と言い合いが続く。
最終的には壁まで追いやられて顎を掬われて、結局また私の負け。
「躾し直さないといけないのかな?」
『出来るもんならやってみろ』
こういうとき、強気になっちゃう私だから精市の思い通りにいっちゃうんだろうな…
「そう、じゃあヤッてみる?」
『……………………っ』
自分の顔が青ざめるのがすぐに分かった。
まぁ、もう手遅れなんですけどね…
『ん…はぁ、んぅ…』
胸をやわやわと揉みながら首元に顔埋めてキスしまくってる精市は変態なんだと思う。
学校…しかも美術室なんて色気のないところでこんなことできるのきっとこの人だけだよ…
その時、ガラッと美術室のドアが開いた。
それと同時にもちろん精市の動きも止まる。
「あ……」
ドアのほうを見ると先ほど私が助けを求めた赤也だった。
…刺激、強くね?
よく見れば後ろには赤い髪の毛…丸井もいるだろ、そこにいるだろ。おいこら。
「す、すいませんっしたぁー!!!!!!!!!!!」
それだけ言うと赤也は勢いよくドアも閉めずに走り去った。
で、後から顔出したのが丸井でしたとさ。
「最後まで楽しんできてねー」
普段見せてる笑みよりもその上の上の上ぐらいはいきそうなほどの満面の笑みで手を振られた。
そのままドアを閉めて去っていった。いや、助けるとかそういう考えはないんだねっ!!?
「じゃあブン太にも最後まで楽しんできてって言われたし、楽しむことにしようか?」
『…………、へ?』
そのまま押し倒されて…何されたか分かるよね?
容赦ない魔王様
(どう?楽しかった?)(…丸井、助けようって考えはねぇのか。あぁ?)(ない)(死ねっ!)
(今日も平和だねー、赤也?)(は、はいっ!)(…見ちゃった責任、取ってもらうからね?)(は、はいッス……)
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男の嫉妬は醜いだのなんだの聞きますが、私はそんなことないと思ってます。