頂き物

□君の誕生日
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「まにあった!」

階段を最後まで登りきった直後、視界が開けて、ソウマの声がした。狭い階段が導いた先には、開けた広場のような場所。広場といってもベンチの一つもない、ただ草だけは短く狩り揃えられているというだけの、極めて簡素な場所だった。こんなところで何をしようというのだろう。
あたりを見回す。特に特別そうなものはないようだ。と、ソウマが大きな声をあげた

「ほら、勇馬!見てて!」
「え?何、」

その、今まで聞いたことがないような、高揚した声に顔を向ける。

「あ、」

白んでいた空が、赤く赤く燃えていた。街が赤くライトアップされ、眩しいほどの光が、2人に降り注ぐ。勇馬より少しだけその光景の内側にいたソウマは、嬉しそうに振り向いた。逆光でどんな表情かわからないはずなのに、どうして嬉しそうだとわかったのか、自分でもわからなかった。
その口が動くところも、はっきりと見えた。「きれいでしょ」暗に、これが見せたかったと語っているその一言に、思わず微かな笑いが漏れた。

「ねぇ、ソウマ、そのカバンのなか、俺の荷物も入ってるでしょ」
「え?あ、うん。…えー?こんな綺麗なのにそれに関しての感想はなし?あ、もしかして写真撮るとか?現代っ子だねー」
「そうじゃないってば。…まあ写真は撮りたいかもしれないけど…ほら、ちょっと貸して」

不思議そうな顔で荷物を差し出すソウマ。それを受け取ると、丁寧に包装を剥いでいく。
ソウマもカバンから包装を取り出して、

「あ、」
「へ?」

2人の手がぴたりと止まった。朝に焼かれながら、赤く染まった顔が一瞬、花が咲くように綻ぶ。

「っ、くくくくく、ふ、ふふふふふ」
「な、なんで勇馬がそんなの持ってきてるのさ!!も、…えぇー?」

2人の手に抱えられていたのは、同じ柄のマフラー。
こんな偶然がどうしてあるだろう。おかしくておかしくて笑う勇馬に、合点がいかないソウマがポカポカと軽く拳を当てる。

「ほら、だって今日、俺の誕生日以外にもあるじゃない」
「え?」
「ハッピーバレンタイン?」
「…………そんなの覚えてる訳無いじゃん」

どっちのほうが大切だか聞かなくてもわかるでしょ。言わないよ。拗ねたように自分が手にしたマフラーに顔をつっこむ。今日目が覚めてからずっと振り回していたソウマが、今度は勇馬に振り回される形になった。
空はどんどん明るくなっていく。赤の濃さは微かに薄れて、星は姿を消していた。

「じゃあ、ソウマが巻いてよ。それ」
「……当然、勇馬も巻いてくれるんだよね?」
「もちろん。でもねぇ…、俺まだ、大事なこと言ってもらってないなぁ」




「ハッピーバースデー勇馬。生まれてきてくれてありがと」



「……うまく逃げたねぇ」
「………なんのことだか」


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愛してるはまだ言えなかったそうです
勇馬くんお誕生日おめでとう!ぐだぐだでごめんなさい!
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