オリジナルストーリー
□じゃあこれでさようなら
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簡単な事なのに、君は目の前の扉を開けるのを躊躇っている。
まぁそれもそうか。
僕たちは家族なんだから。
君がその扉を開ければ僕等はもう一生会えないだろう。
だから君が躊躇う理由も分からないでもない。
だけど僕だってずっと待っていられない。
「早く行きなよ。大丈夫、絶対ばれないから」
だって僕達は顔が似ているのだから。
そう付け足して言うのだが。
やはり開けない。
ついには涙まで流しだした。
僕だって別れるのはつらいけれど。
これは仕方がない。
そうしないと君は生きて逝けないから。
ならば、やはり男の僕が背中を押してあげなければならない。
「はぁ…じゃあ分かったよ」
僕がため息をつきながら吐き出した言葉に君は俯いていた顔を上げる。
僕は…
「君は今日から僕だ。君は僕として生きて。僕は、君としてこの世を絶つ」
じゃあこれでさようなら
僕はその部屋を抜け出した。
部屋の中から何度も何度も君の僕を呼ぶ声が聞こえた。
部屋には鍵をつけといたから
君はあの扉を開かない限り出られない。
『私』は愚民どもにこういった。
「この、無礼者!」