黒バス long

□始めようか
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ダムダムとボールを跳ねさせる。

この感覚は、いつ頃からだっけ。

試合前のこの緊張感。たしか中二の夏頃以来だったかな。


ダム・・・ッ


嫌なものまで思い出してしまうのも、仕方がないよね。


私はその嫌なものを放るようにシュートを打つ。
一応スリーライン外から放ったそれは、綺麗にリングをくぐってくれた。


周りからまた驚きの声。


反対側では火神クンがダンクを決めたらしい。

あれに衝突したら私は死ぬかもしれないね。うん。

今更、アイツと一対一をやるのが嫌になってきた。


「始めッぞ」

「…ん。」


お互いハーフラインに立って向き合う。
一応礼だけしておく。不本意だけど。


「お前から打っていいぜ?」

「…そう。」


火神クンに一度ボールを渡し、また受け取る。

受け取った瞬間からゲームは始まる。


火神クンは私がどう出るか構えながら窺っているようだ。

ダムダムとバウンドさせながら対峙するも、やっぱり目が違う。

勝てるわけがない。


「お前、やる気あんのか?」

「あるか無いのか聞かれたら、無いよ」

「テメッ、」

「あ?怒った?怒った?やっぱ火神クンは怒りやすいね」

「バカにしてんのか・・・!?」

「うん」



「なぁ、監督」

「なぁに?」

「白川って強いのか?随分余裕みたいだが」


「ふふん、度胆抜かれるわよぅ」

「は?」



二人して中々動き出さない。
さっさと動けばいいのに。って、火神クンも思ってるんだろうな。


「ねぇ、構えるだけ無駄だと思わない?」

「あ?」

「だってそれだけで動きは遅くなるし無駄な筋肉使うし、なによりこれからどう動くか分かってしまう」

「分かるのかよ、オレがどう動くか」

「うん。私が動くまで動かないつもりでしょ。
だったら――」



そのままシュートをする。

ボールはキレイに弧を描いて、向こう側のリングをくぐる。

火神クンも、そしてギャラリーの先輩方も驚いている。

まさか、ここからシュートを入れるはずはないだろうと。



「動かないまま点を入れるだけよ」

向こう側のリングからボールが落ちる。


「ハッ、中々やるじゃねぇか」



今度は火神クンからだ。
やっぱ気迫が違う。そこらへんのへにょへにょしたヘタレどもとは。


「飛ばしてくぜぇ」

「んー、ヤダな」


抜かれた瞬間に後からボールを弾き飛ばす。

すかさずボールを追いかける。
今度はさっきみたいなシュートは無理だ。させてくれないだろう。

ゴール下までいってリングに添えるように入れてしまおう。


「んー、追い付かれると困るし」


姿勢を低くしてスピードを最大まで引き上げる。
これぐらいしか対抗策がないのも悲しいよね。


「ハハッ、やるじゃねぇか!」

「え」

シュートを入れようとしたが、火神クンに追い付かれ、ボールを奪われる。

速。


それからはあっという間にダンクされる。
ダンクされると届かないからどうしようもないんだけども。


「…さすがだね」

「ちったぁ認めたか?」

「うん、ミジンコぐらいには」

「ンとにむかつく奴だなテメェは!」




「さっきの、シュートは・・・」

「そう、緑間君のシュート」

「どうしてだ?黄瀬みたいにコピーができるのか?」

「コピー、というより、あの子の場合は見て習得できるのよ。自分のものにできる」

「す、ごいな・・・それ」

「あの子の能力といったところかしら。
昔からなんでも見れば習得できるのよ」

「そりゃあ凄いプレイヤーにもなるわ」

「…まぁ、それが強みでもあるけど、あの子にとっては少し違う」

「・・・・・・?」

相田はゲーム中の二人を見つめながら真剣なまなざしでつぶやくように言う。

「あの子が、すべてを諦めざるをえなくなった原因でもあるの」


 
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