黒バス long

□臆病だから
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「はい腹筋50回2セットー。終わったら5分休憩ねー」

「「ッス!!」」


部員が指示通りに動いている中、昨日相田先輩に教えてくれたことを再確認するために、メモ帳を開く。


相田先輩はみんなに目をやりながらステージに座る。


「どう?ちゃんと話せてる?」


「・・・・・・まぁ。
火神クンも黒子クンも、あまり女子と話さないんですね」


「そうらしいんだよねー。
あの子らも青春しろよ!女子とイチャつけ!」


「いらないんじゃないんですか?そういうの」


「お?」


確認し終わったメモを閉じてポケットにしまう。


相田先輩を見ず、一生懸命に筋トレしている皆を眺めれば、

なんだか懐かしい思いになってくすぐったくなって身を少し動かした。



「…バスケでいっぱいですよ。
あの人達の頭も心も。今更、女の子が入る余地あるんですかね?」


「……白川ちゃんも、そうだった?」


「えぇ。あれからは、何もかもがどうでもよくなりましたけど」



「もうワンセット!」

「「ッス!!」」



「…色が、ないんですよ」

「……」


昔は、好きなバスケをやっているだけで、毎日が楽しかった。

でも、あの試合以降、


バスケがキライになり、やるのが怖くなり、何もかも諦めて、逃げてきた。

何をしても、毎日がただの日々でしかなくなって。

色もついていない、真っ白なキャンバスをただ積み上げてきただけのような。


そんな毎日になった。



「昨日のは、楽しかった、かもですけど」

「ん?」

「少しだけ、ほんのちょぴっとだけですけど」



「よしっ!!5分休憩ー!!」

「あっ、タオル持って行ってあげて」

「はい」


人数分のタオル持って思い思いの休憩に入っている部員に渡していく。


「お疲れサマです」

「おぉ、ありがとな」

「いえ、」


今までの男の人とは違う。

本当にバスケが好きで、そのために頑張っている、キレイな目を持っている人ばかりだ。



「はい」

「ん、ワリィな」

「別に、大丈夫よ」


最後に火神クンに渡してさっさと戻る。


でも、だからこそ、近づきにくい。

私なんかが、傍に居ていい人達ではないのではないだろうか。


「怖い?」

「…えぇ」

「大丈夫よ。アイツらは、他の奴らとは違うから」


肩をポンと叩いてステージに降りて皆に指示を出しに行く相田先輩。

私も、ああやって自然と話せるようになれればいいんだけど。


どうしても距離を置いてしまう。


「…臆病だな」


目を伏せて自嘲気味に笑う。


「…・・・・・・」


「なんか、不自然ですね」

「ああ」


「もっと自然体の方が、白川さんもボクらも楽なんですけどね」


「すぐには無理だろうな。
まぁ、気長に待ってやろうぜ」


「それでも何かきっかけが欲しいところよね」


「おわっ!!」


パス回しをしているところに監督が入って来て慌ててボールを止める。

何をアブネー事してんだ、この人は!!



「危ないから急に入ってくんなよ…」

「瞬発力と判断力の検査よ!!合格!!」

「嘘つかないでください」


ビッ!!と景気よく親指を立てる監督。

それからフッと腕を下げる。


「まぁ、真面目な話。
あの子はきっかけが無いと、そうそう心開いてくれないわ」


「はぁ、」


「そこで・・・火神クン!!」

「!?」


「あなたは、白川ちゃんの心開かせましょう作戦の特攻として!!きっかけを作りなさい!!」


「そ、んな急すぎるって…、デスよ!!」


ぐわっと俺に歩み寄って俺の頭を掴んで自分の顔の位置までぐいぐい下げる監督。

ちょ、まじで痛いってそれ!


「大丈夫。
火神君みたいなタイプはあの子も未経験だし、

あんたもあの子みたいなタイプは未経験でしょ?
お互いに良い感じなのよ、すでに!!」


「だからって、きっかけっつったって…」


「むしろバカな火神君が適役!!ド直球に付き合うのもいいから!!頼んだわよ!!」

「いつになく投げやりだろ、・・・ッスね!!!」


そして白川の所に戻っていく監督。

何を考えてるんだ、あの人は・・・。
 
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