復活 long
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ミシェル。
長く、綺麗な赤髪を贅沢に乱しながらもソファに寝転がる。
手には俺が滅多に読まないような本があり、視線や意識全てがそれに向かれている。
オレがいるというのに、無防備で御構い無しな態度は毎度呆れさせる。
だが、そんなミシェルの態度は、呆れる事はあっても、飽きることはない。
「スクアーロさん」
「どうしたぁ?」
「デブ、……もとい太っている人の蔑称でよく豚が使われていますけど、
……実際の豚の体脂肪率は12〜14%程だそうで、全然太ってないんですよね」
何を言うかと思えばこれだ。
こいつはどこから拾ってきたか知らない知識を、何食わぬ顔で、それも本を読みながらのついでというように話し出す。
以前は、ゴキブリの話だったな。
「それがどうしたぁ?
それよりも体脂肪率の多いお前を、この豚が、とでも罵っておけばいいのかぁ?」
「そんな話ではないでしょう、この豚が。」
今の流れで俺が罵られるとは思ってもいなかった。
「私は人を罵るのは好きだけど、他人に罵られるのは嫌いなの。
それも、スクアーロさんに罵られるのは、ね。」
読んでいた本を閉じて、体を起こし視線と意識をやっとこちらに向けるミシェル。
急に話しかけてきたのは、読んでいた本が飽きてしまったかららしい。
夕日に照らされてキラキラと茜色に反射するミシェルの長い髪。
ミシェルは前におりてきたその髪を後ろに掛け直す。
「ちなみに、アザラシだったかアシカだったか、どちらかは忘れましたが、まあ、どちらも似たようなモノなので曖昧なまま話を続けますと、そちらの方の体脂肪率は50%を超えるものだとか。」
「お前のそういう話にはヤマもなければオチも無ェな」
「人の話す事全てに順序正しい起承転結があると、思わないでくださいね?
私の話は、大体、起・回・転・烈で構成されていますので」
そりゃまたなんの展開もないのに突然のどんでん返しの繰り返しに最終的には強烈な終わりを迎える話の構成だ。
十分な起承転結だと思ったが、言葉の魔法とは不思議なものだ。
「もうすぐ日も暮れます。
任務の時間ですよ?そろそろ準備しませんか?」
ソファから立ち上がってオレを横目に見ながら、ミシェルは言った。
その姿は、これから人を多数殺す女の姿には、到底見えなかった。
まるで、何かアミューズメントパークにでも出掛ける前のガキのような、
そんな嬉々とした目がこちらに向けられていた。
「そうだなぁ、そろそろ準備すっか」