復活 long

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「失礼しまぁす」


執務室に入ると、相変わらずボスがウィスキー片手に私を見据えていた。


手には何かの資料。

いつもヴァリアー内暴力が凄まじいから(特にスクアーロさんに対して。今更括弧つけていう事でもないが)、仕事をちゃんとやっているか気になってはいたけどちゃんとこなしているらしい。


まあ、そこはボスらしいよね。



「ボス、お話って何ですか?」


「ミシェル。
以前、あのクソ猫が暴れた時があっただろう」


「・・・・・・っ、ええ」



あのクソ猫が暴れた時。
ボスが言ったのは、私の事だ。


私の中には、昔に取り込まれた“猫”が居る。
偶然でも奇跡でもない必然でもない、人為的に取り込まれた、猫。


それは、今も私の中にある。あれから出てきてはいなくても、私に圧倒的な恐怖心や痛みが積み重なると出てくる。


あの猫は、私の中に取り込まれてから、幾度となく出てきた。
話が通じるようで通じない。なにしろ獣だから、通じなくて当たり前なのだけれど。


それは、私がヴァリアーに入ってすぐに、また出て来た。

無残で悲惨で残酷で非道な、あの一週間。

あのクソ猫が暴れた時、とは。この一週間の事件の事である。



「・・・・・・あれから出てきちゃいねぇようだが、何か覚えてねぇのか?」


「何も。
猫になっている時の記憶は、全く覚えてないんです」


知識を共有出来ていたとしても、記憶は共有出来ない。

だから、あの時、猫は。


ヴァリアー幹部を襲った。

また、ミシェルを苦しめる奴が出て来たのか、と、哀れな勘違いをして。


「・・・・・・今の所、特に出て来るような節はありません」


「そうか。
なら良い」


ボスはそれを確認する為に私を呼んだらしい。
ボスは、いつも不機嫌そうでなんだか怖いけど、人は良い。

きっと、人の痛みが分かるからだ。


「ありがとうございます。
それじゃあ、失礼します」


ボスも、不器用で優しい人だ。

ここにいる人達は皆そう。
不器用で、でも優しくて。
こんな私でも、対等に見てくれる。


あの頃は、こんな優しい人がいるだなんて知らなかった。


あのまま、朽ちていかなくて、本当に良かった。
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