ごった煮
多ジャンルごった煮
小ネタ集
◆官兵衛さんといっしょ
ジャラジャラ、と鎖に繋がれているという情けない烙印を響かせながら、中庭でゴロゴロと鉄球の上に背中を乗せて時間を弄ぶ。
「官兵衛さん?」
「どしたい、お前さん」
「また随分と器用に鉄球で遊ばれますね……。
ああ、なんだか切なくなってまいりました」
「それを言うな。小生も分かっているつもりだ」
ここまで器用に鉄球で球遊び出来る程、こいつと付き合いが長くなってしまったという訳だ。
どうにも小生はその事についての末期症状的危機感が薄れているらしい。
鉄球の上でひっくり返ったまま、頬に手を当てて切なげに見下ろしてくるこの三成の側近を見てそう思ってしまった。
しかしこの娘はこっから見ても別嬪なのは変わらなくて楽しいねぇ。
「ほら、そろそろ起きてくださいまし。
官兵衛さんの分の茶菓子もありますから。
お茶にしましょう」
「……お前さんはちっとも変わらんね」
「はい?」
起き上がって、クルリと向き直って改めて真正面から見つめる。
じっ、と黙って見つめられて恥ずかしいのか照れるように顔を逸らして、髪の乱れや着物の乱れを気にしだした。
うん、相変わらず可愛い。
「お前のそばにいる凶王三成はアレ以来人が変わっちまったね。
……ありゃ何だい、腹立たしいのは昔からだが、あの凶王てのが相応しいぐらいのひん曲がり方は」
「…………ただの迷い子でしょう。
太閤の為生きてきて、それが亡くなってしまった。
生きる意味を、失ってしまったのです。
だから、今は徳川を殺すことだけを生きる事としている。不器用で真っ直ぐな迷い子です」
「迷い子……」
「昔から変わってしまったのは、貴方もでしょう?官兵衛さん」
風が吹く。
俺への当て付けのように、強い強い向かい風が吹く。
それでもあまり大きく揺れない俺の前髪には敬意を評してやりたい。
「貴方は、そんな物に縛られ続けるような人ではありませんでしたよ……?」
嗚呼、見えなくて良かった。
歩いて何処かに去っていく彼女の悲しげな後ろ姿を、眺めてはそう思った。
きっと、きっと見えていたら。
きっと、お前さんの泣いてる顔が見えていたら、
小生は、小生で無くなってしまうだろう。
2014/01/15(Wed) 16:40
◆ポッキーゲーム
『ポッキーだが、トッポだが、プリッツだが知りませんけど』
「おう」
『いつも買いもしないお菓子でただのキリの良い日に遊ぶのはいかがなものかと』
「そのくわえてる菓子はなんだ」
『別に、隊長としたいからくわえてるワケじゃなくてですね』
「……………」
『ただ食べたいからくわえてるだけです』
「はぁん?じゃ、勝手に食ってろ」
『………………………』
「んだよ」
『ここはするべきですよ隊長。でないと失礼です』
「あ?」
『何もしないからと言って私の部屋に上がり込んで泊まった挙げ句に本当に何もしなかった時の隊長レベルで失礼です』
「……あん時は悪かったな。んじゃしてやるからナニかさせろ」
『やー』
「んだよ、意味分からん」
2012/11/12(Mon) 23:17
◆トラピ
怠惰の椅子ならいくらでもあるよ。好きなのにお座りよ。疲れたんだろう?
戦争を無くしたい、無くそう、無くせる、無くす。
あれだけ好き放題言った挙げ句にコレか。無惨だね。情けないね。やだやだ。
ガチガチと震える手元にあるのは拳銃。その銃口は君の愛する人を向いている。
驚いたことに、愛人は君の様子に驚いてもいない。むしろまたか、と呆れた様子だよ。
「……お前もか」
誰かと比べているようだね。誰かかは知らないけどさ、何もしないのはどうなんだい。アイツ。
君の愛する人は君をそんな風に冷たく見据え、ただふんぞり返っているだけなのかい。
呆れたもんだね。
「……すまねェな」
『何が済まないのかしら、私はどうって事ないわ。ただあなた方トライピースがくだらないと思っただけよ。戦争なんて、無くならないのよ。くっだらない』
そう。あいつらはくだらない幻想を抱いたくだらない組織。
その中でも一際くだらない金の好きなだけのコイツを愛した。えぇ、そうよ。愛したわ。
愛していたのよ、本当に…
『……もう、戻れないわ』
こめかみに銃口を向け、にっこりと笑いかける。あの人は私の最後を見てくれた。真っ直ぐに。
『愛しているわ、ゴルドー』
2012/09/25(Tue) 22:38
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