こんな事になると解っていたなら、あの手を離したりなどしなかった。引き止めて、どうか私と共に生きていこうと抱き締めていた。けれど彼は消えた。私の前から、世界から、何処にも。あの時、手を離さなければ。
「シリウスー!」
馬鹿なハリー。泣きたいのも叫びたいのもこっちの方だ。あんただけ彼の特別なんて。彼が特別だなんて。あんただけじゃないんだから。
「待って!」
ハリーの驚いた目が私に向けられた。だから彼と繋がってるのはあんただけじゃないんだってば!私だって彼を!危険、そんなもの関係ない。彼のいない世界の方が私には余程。
「私を置いて行かないで!シリウス!」
最期に彼の黒いローブを引いた手は震えを隠せないでいる。