一緒にいた年月はそれほど長いものではなかったので、思い出はすぐに消えてしまった。思ったより簡単で未練もしがらみも残さずキレイにさよなら。望んだのは永遠だった事実にもサヨナラ。
「まさかこんなに脆かったとはねぇ…」
墓前に立つ足は、疲れを感じる事を忘れて震えを棄てた。墓標のごとき二刀を見る目は、現実を見る事を強く拒んだ。彼に触れた心は、痛みと圧迫感で破裂に追い込まれた。
「あーもう、」
嫌になると嘆き空を見上げる。最期に見た彼の色が空に紅々と広がった。生きてる意味が消える音が鼓膜を震わせる。心を奮わせる。景色は色褪る。
「サヨナラ」
ようやく世界への挨拶が済んだ。