嬉しくて堪らない。握り返してくれる手や、名前を呼んでくれる声が。
「きっと、好きなのでしょう」
「どちらが」
「どちらも、です」
握る手に力が込められた。離してくれないつもりですか。目の前の顔は相変わらず笑顔であるので、怒りの込められた表情を返してみた。
「ヘイハチ殿、何をするおつもりで?」
「いやはや、どうにも貴女は鋭い!」
しかし笑う。自分が数秒前に何をしでかそうとしていたかを棚に上げて。
「好きです」
「ヘイハチ殿、」
「愛しています」
「ですが、ヘイハチ殿!」
笑顔で吐かれる声が泣いていた。寂しいのでしょう、怖いのでしょう。ならば無理をなさらずに。それでいて、しっかりと。
「生きて下さい」
「ですが私は、」
「心中ならば戦の中で共に致しましょう」
「…」
「だから今は生きるのです」