「何してるの」
視界の端に見えたのでと近付く貴女は何と残酷なのでしょうか。無意識、それもまた残酷。目の前でサラリと落ちる黒髪を引いて、無理矢理に唇を奪って(貪って)。私には何処からが狂気かなど解らないのだからいっそこの手で貴女と私を。
「ねぇ、ヘイさん、どうかした?」
「いえ何も」
「…嘘だね」
「どうでしょう」
腹の内はまだ見せるわけにはいかないでしょう。だからこそ笑顔を仮面として纏い、貴女はまた騙されてくれるのですから。それがまた愛しくて愛しくて。
「強いと言えば、愛してます」
「また嘘を…」
「信じませんか」
悔しくも悲しくもありません。今だって貴女の眼は彼を必死に追っているのですから。ただ、羨ましくはありますが。
「今夜の夕飯は天麩羅にしようか」
「それより私は貴女を喰べてしまいたいのですが」
「…」
「白米も忘れずに」
「、了解」
だけどそんな事を言えるはずもなく。