何を言っても驚かないかと念に念を押された。その口調は至って真面目。眼においては少々充血していて真剣そのものに見えた。
「内容によっては驚くかもしれないけど…」
「お、驚くな!」
こういう時は嘘でも驚かないと言うべきだと諭された。それが社交辞令という暗黙の社会ルールらしい。
「じゃあ、うん、驚かないから」
「今更だな」
「ちょっと、私はどうすれば良いんですか」
ヒョーゴにしては矛盾が多過ぎる。これは実に奇怪だ。真剣に見えていた眼だってよく見れば微かに水気を帯びているし、何より泳いでいる。何故最初に気付かなかったのか、私の馬鹿。
「泣かないで」
「泣いてなどない」
「気持ち悪いよ」
「思いやりが無さ過ぎるぞ、貴様はキュウゾウか」
「あ、」
「…あ゙!」
部屋の隅にて大きな猫が体育座りでこちらを睨んだ。存在に気付かなかったとは言えない。