寝起きの目に太陽の光は痛い事この上ない。しかしながら布団を剥ぐ手が誰のものかなど見えずとも解りきっていた。だからこそ抵抗を試みようとする気も起きるのだ。
「布団返してよー」
「駄目だ」
「ケチ」
閉じた瞼の裏にすら先程の太陽の残像が残っていて眩しい。おかげで老人並みに目覚めの早いオールバックがぼやけて見える。解るのは彼の手に布団が掴まれている事と、きっと口端を上げているであろう事。
「大体、私が何でこんな早朝に起きなきゃいけないの!」
「昨日…朝食の準備を手伝うから早く起きるとかほざいてたのは誰だったか?」
「違う違う、それは口が勝手に」
「あー…この口か」
いつの間に布団を手放したのか。代わりに包み込まれる頬は瞬時に熱を持った。角度をやや傾かせながら近付く顔。
そして、
「だったらその口、俺が黙らせてやろうじゃねぇか…」