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□君に、ただいま
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晴れているのは心ではなく頭上にめいいっぱい広がる空。昨夜の雨で地に溢れていた赤は跡形もなく流れていった。まるで何もなかったかのようにキレイサッパリと。
「…終わったね」
うんともあぁとも返事を返さないのはきっと宇宙人だから言葉が通じないのだろうと言い聞かせて期待はしない。それ以前に生きて隣にいるという現実味が欲しくて言葉に出してみただけなのだ。
「キュウゾウはこの後何処に帰るつもり?」
「…戦場、?」
「いや聞かれても」
「それしか無い…」
「淋しい奴め」
「…かたじけない」
彼は戦う事でしか存在を保てないのだ、と思い込んでいるに違いない。
帰る場所は戦場だと言って死んでいった侍は過去に沢山見てきた。
だからこそ当たり前のようにそうやって生き延びてきた彼に惹かれているのもまた紛れもない事実なのである。
「それで良いの?」
「だから、それしか無いと言っている…」
私が帰る場所になってあげても良いんだけど。
驚いているのか解らない無表情な顔のまま視線を向けられる。なんてね冗談だよと笑って誤魔化してしまおうか。
だけども嗚呼、無情にも時は既に遅かった。
君に、ただいま
どうした事か安堵で顔が歪んだのは私の方であった。世話になると下げた頭が一向に上がらないのは彼なりの優しさなのか。足元に落ちる水滴は私が作り出した昨晩の雨の名残なのか。