柄にもなく愛というものを囁いてみた。
困った顔をされて柄でない事は滅多にするべきではないと教訓した、が後の祭。
「嬉しいけど…」
けど何だ。言いかけたところで口を閉じた。理由を聞くなど野暮な事はそれこそ柄ではないし趣味でもない。何より怖い、この俺が。
「キュウ、」
「忘れろ」
名前を呼ばれそうになって咄嗟に放った一言が逃げの言葉で自分に失望した。これ以上ない類ない稀な馬鹿だとも思ったが自責してみたところで何が変わるわけでもなく、意味のない事に思えてやめた。最初からお前が何を見ていたのか解っていたのだ。ただ知らぬふりをしただけであって。知りたくもなくて。
「ごめん…」
至極、戦へ行きたくなったと言えば柄に当てはまる事はできるのだろうか。