dream@

□灯火が消えた
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闇海に火が灯った。
キレイだなんて思わないのは、それがきっと彼だと解っているからだ。
随分と前に船が消えて行った地平線を見据えて息を飲む。だからと言って何かが変わるわけはないのだが、記憶は断片的であるものの幾分ハッキリとしていた。


「すぐ帰るから待ってろよ!」


ただ、余りにも鮮明過ぎる笑顔に時間の流れを狂わされてしまっただけの話だ。
彼も船も、もう戻ってはこないというのに。
だからこそ飽きもせず、使命であるかの如く朝日を迎える自分に嫌気が差した。
望むは貴方と共に迎えるはずであった最期ばかり。


「あぁ…」


地平線に揺らめく灯火はいとも簡単に期待を裏切っていくのだけれど。















(070619)
紛れもなく、それは彼の魂灯であった。

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