手を繋いでさらってしまおうか。それとも何食わぬ顔で素通りしようか。それだけで運命が変わってしまうなど。人生とは実に恐ろしいものだ。
「あのー…」
「はい」
後先考えずに行動してしまうのが自分の悪いくせだと、気付くのが遅かった。しまった、くそぅ、俺の馬鹿。
「どうしました?」
「い、いや!何も御座いませんよ!あははは!」
冷や汗が額を流れる。吹き抜ける風が冷たくて身震いがした。
「汗、」
「大丈夫です!」
「風邪なのでは?」
「本当に大丈夫ですから、健康だけが取り柄でして!」
手をブンブンと千切れるほど振るとクスリと可愛い笑顔を振り撒けられる。瞬殺。悩殺。
「か…、」
「か?」
あぁ!その首を傾げる動作とか駄目だって!俺だって男なんだ。我慢にだって限界がある。思わず喉に溜まっていく生唾を飲み込んだ。
「取り合えず、友達から頑張りますので」
「はい、…?」