Short Story
□理科室に潜む悪魔
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―とん、とん―
「…ん?誰だよ…」
睡眠を妨害され少し不機嫌な気持ちで顔を上げると、そこには希凜(キリ)先生が立っていた。
「緑川。ちょっと話があるから、職員室に来てくれませんか?」
「?…はい。」
何だろう。
呼び出しを喰らう理由はやっぱりテストがそんなに酷かったのだろうか。
今学期やり直しすんのかなー…。
そんなことを考えながら、先生と一緒に教室を出た。
他のクラスより俺のクラスは早く終わったらしく、廊下はまだ静かだ。
今は前を歩く先生の足音と俺の足音しか聞えない。
「……わっ!」
下を向きながら歩いていた俺は、急に止まられたせいで先生の背中にぶつかってしまった。
「す、すみませんっ!」
「…いえ。」
どうやら職員室に着いたらしい。
だから止まったのか…
「失礼します…」
この部屋は大人が多いし、静かだから俺はあまり好きではない。
「緑川」
テスト返却後、なんとなく呼び出される理由は考えていた。
でも、本当は聞きたくない気持ちでいっぱいだった。
「…どうしたんですか?この点数…」
いつもの口調だったが、俺には先生の怒りがひしひしと伝わって来る。
「え、その……今回テス」
「言い訳は聞きたくないです。とりあえず、明日の放課後理科室で補習授業をし、今週末にテストをします。それでも駄目だった場合は進級できなくなると思っておくように。」
「……はい」
その後俺は、部活動以外の生徒は誰もいないグランドをよこぎり、自転車にのって一人寂しく家に帰って行った。