Novel

□【恋のデータ保存】
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【恋のデータ保存】


私はデスクワークは好きではない。
人を殺すのもあまり好きではないが、動かないデスクワークよりはマシだ。
ジンジャーはきっと暗殺を楽しんでいるんだろうな
キーボードを滑らかに動いていた指を止め小さくため息を吐いた。

「だーれだ!」

弾むような声が聞こえ目の前が真っ暗になる。
疲れに調度いい温度と調度よくない声

「おかえり、ジンジャー」

少し香る血の匂いにすぐに来てくれたんだなと思った。
目を覆うジンジャーの手を下にずらすと、ジンジャーが私をその手で抱きしめた。

「つまんなかったからって僕に冷たい態度とらないでよ〜」

クスクスと耳元で笑ってそう囁く

「だって、1人だけ楽しんできたんでしょ?」

そう言ってジンジャーの方を向いてニヤリと笑えばジンジャーも口元を引き上げる。

「これから楽しませてあげるよ」

するりと顎に手を伸ばされ、大きな目に吸い込まれるように私は静かに目を閉じた。
リップ音が弾む啄ばむようなキスからだんだんと深いものへと変わっていく
それに応えるためジンジャーの方へと手を伸ばし柔らかい髪に触れる。
回転イスだったためいつの間にか当たり前のようにジンジャーの方を向いていて
ジンジャーが首筋を撫でシャツのボタンに手をかけた瞬間
ピロンと不吉な音が響いて、ジンジャーしかいなかった世界から現実へと連れ戻された。

「あ!ちょ!ジンジャー?!」

私のシャツに伸びた手とは違うもう一方の手がキーボードの上に乗っていた。
ジンジャーは楽しそうな笑顔のまま手を止めることなくシャツのボタンを開け広げた。

「ジンジャー!」

「保存してないの?」

まさかという顔でジンジャーは私に目を見開いてみせた。
私ががっくりとうな垂れて伝えるとジンジャーはさも嬉しそうに声を漏らして笑った。

(僕との時間は保存して後にしとく?それともこれみたいに消して始めから?)

END

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