番外編
□前編 酒と涙と美食屋とキャバ嬢
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とある昼下がり。
僕はいつも通りお店の厨房で夜に向けての仕込み作業をしていたんだ。
昨日1日かけて捕ってきたスターマイマイ(星形の殻の赤貝みたいなもの)を薄口の醤油とスネーク昆布のダシで煮ていく。
ふふふっw
殻から外しにくいけどこれって凄く美味しいんだよねw
後は刺身にして触感を楽しむのもいいし〜、軽くバターソテーして出すのもいいなぁ・・・
なんて、調理法を考えながらぐつぐつと煮える鍋の中を覗いていた時だった。
バタバタバタ・・・・ガラガラっ!!
その人は突然やってきた。
「公ちゃーーーーーーん!!;大変!大変なのよぉーーーーーっ!!;」
『Σビクッ・・・・あ、こ、こんにちはっ・・・;』
突然何の合図もなしに入って来たその人。
かなりの身長の高さでガタイもそれなりにいい、男性。
長い黒髪を煌びやかな装飾を施したバレッタで止めて、TシャツにGパン。
短い眉毛に白い肌。
一瞬誰かわからなかったけど、その口調とくねくねした腰つきから僕はその人が誰なのか分かった。
『・・・・あぁ、楓ママでしたか。』
「ちょっと!何よ、その間はっ!あたし以外の誰だっていうのよ!失礼しちゃうわねっ!!;」
・・・・もう一度言います。
彼は男性です;
いわゆるおねぇ系ってやつ?
楓ママは僕のお店の常連さん。
大通りで大きなお店をしているクラブのママさん(オカママ)。
いつもはお化粧ばっちりの大人の色気を醸し出している状態でお客さんとお仕事前の同伴で来るんだけど、今日は完全なすっぴん。
すっぴん見るの初めてだけど、これはこれでカッコいいと思う・・・・
じゃなくって;
『どうしたんですか、開店前に・・・しかもすっぴんで・・・・』
半泣き状態でハンカチ(レースの真っ白w)を握りしめながら腰をくねらせる楓ママに尋ねた。
そうしたら、扉の前にいた楓ママは凄い勢いでカウンターに近づいてきた。
・・・・正直マジで怖かった;
「そうなのよぉ〜(涙)大変なのよぉ〜、もうね、一大事!だ・か・ら!公ちゃん!あたしを助けて〜!!;」
『あの・・・とりあえず落ち着いてください;ね?;』
ボロボロと目から涙を流してハンカチを噛む楓ママに若干引き気味の僕でした;
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