番外編
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目の前には泣きじゃくるぬいぐるみの様なフォルムをしたトナカイちゃん。
そしてそのトナカイちゃんは人語を話す・・・
え、これってマジで?;
僕もいろんな生き物を見てきたけど・・・
確かに今まで声真似をしてくるような生き物はいた。
でもこのトナカイちゃんは自分の意志で自由自在に話をしている。
やっぱり新種!?
新種ってことはきっと誰も食べたことがなくて、美味しいか不味いかもはっきりしていない・・・
どんな、味がするんだろう・・・
本人はまずいって言ってるけど、その不味いがどれほどのレベルなのか・・・
・・・・ゴクリ。
気が付いたら僕はホルスターに収めたはずの愛刀を手にしていた。
「お、俺不味いっていったじゃんっ!やめてくれよ!本当にまずいんだよっ!!;」
『大丈夫、大丈夫・・・ちょこっとだけだからwちょこーっと味見するだけだからw』
「Σ味見じゃねーよぉっ!切られたら痛いだろ!?そんな良く切れそうな包丁を見せられてその言葉が信じられっか!;」
『言葉を喋るってなると少し抵抗あるんだけど・・・・ま、いいか☆』
「聞いてねぇしっ!た、頼む!助けて・・・・」
『そんじゃ、大人しくしてねん♪』
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!;」
僕はトナカイちゃんが泣き叫ぶのも無視して包丁を振りかざした。
・・・・けど。
――シュッ!!
『Σうわぁっ!!;』
何か物凄い殺気を感じて僕はその場を離れた。
そして僕がいた場所を見れば・・・・
・・・・刀??;
さっきまで僕がいた場所には一本の刀が・・・
・・・え、なにこれ;
「Σチョッパー!無事かっ!?;」
「ぞ、ゾロー!!」
『え?え?え?;』
余りにも意味の分からない展開に狼狽えていると草むらから一人の男の人が・・・
短髪の緑の髪に左目にお兄ちゃんみたいな傷。
それに刀が二本・・・あ、鞘があるから三本か。
それを腰に下げて、着物に腹巻??;
カッコいいっちゃカッコいいんだけど・・・
トナカイちゃんはその男の人を確認すると物凄いスピードでその場を離れて男の人の側へと移動した。
「ぞ、ゾロー!俺、俺・・・すっげぇ怖かった!;」
「ったく・・・お前があの化け鳥に攫われっからだぞ;」
「仕方ねぇじゃん!アイツすげぇスピードで俺を咥えて飛んだんだから!;」
「アイツらも心配してたぞー・・・っと。」
『え?;』
泣きじゃくるトナカイちゃんの頭を撫でていた彼は突然視線を僕に向けてきた。
そのお顔は若干怒っている・・・ってか若干でなく確実に怒っていらっしゃる!;
「おい、女・・・てめぇ、人んとこの船医を良くも泣かしてくれたな。」
『せ、船医??;』
「しかも食おうとしていやがっただろ?どう落とし前付けてくれるんだ?」
『あ、あの、僕・・・・って!何刀構えてんですか!?;』
「・・・安心しろ。女は殺さねぇ。軽く痛い目見てもらうだけだ。」
『Σ僕の話聞いてますか!?ちょ・・・』
「覚悟っ!」
『うわぁっ!!;』
話しも途中だってのに彼は無防備な僕に向かって刀を振り下ろしてきた。
ってかあぶねぇっ!!;
咄嗟に避けたけれど、相手はかなりの使い手の様で・・・
僕の前髪は数本、切られた。
「ほぉ・・・手加減したとはいえ良くよけたな。中々の身のこなしだ。」
『それはどうもっ!でも僕の話を聞いてくれませんかね!?;』
「問答無用!次は少し本気で行くぜ!?」
『〜〜〜っ!もうっ!!;』
僕が避けたことがよっぽど嬉しかったのか彼はにやりとニヒルに笑いまた刀を構え始めた。
・・・仕方ない。
とりあえずそのプライドをズタボロにしてから話を聞いてもらうことにしよう。
女の髪切ってタダで済まされると思うなよ?
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