小説

□流星を揺らした
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「星を捕まえに行くぞ」

なんて横暴な物言いで夜の天体観測に誘われたのは部活終了30分後のことである。
彼─緑間にしてはなかなかメルヘンでロマンチックな誘い文句に、黒子は飲んでいたスポーツ飲料を虹が見えそうなくらい噴き出すところだった。

突然星を見たがるなんて何があったのかと問えば、おは朝で流星群が来るというニュースを見たのと、その後の占いでラッキーアイテムが星型のものという偶然に偶然が重なり続けた結果らしい。なんと運命的なんだろうと黒子はおは朝と宇宙の塵に感謝をした。

流星群は何時頃見えるのかを緑間がテーピングをしている間に携帯で調べたらどうも11時らしいことが判明。そんなに遅くまでこの寒空の下にいなくてはいけないという絶望感と、彼と長い時間過ごせるという法悦に浸った後、黒子は家に星を見てから帰ると連絡を入れた。
気を付けて帰ってこい、との返事に素直に頷き電話を切った。
自分が女であったら許されることはないのだろう、男で良かった。何となくさっきまで感じていた絶望感が薄らいだように思えて苦笑をする。

冬は去り春が来始めたこの時期は昼間は暖かくとも日が沈めば気温は下がる。いくら運動した後とはいえ、外に立っていれば体はすぐに冷えてしまい校門を出る頃には体温の低い黒子の手はかじかんでいた。
取り敢えず時間を潰すためにファーストフード店で夕食を取り、コンビニでカイロと温かい飲み物を買って近くの河原に行き他愛のない話をする。
幸せな時間とは早く感じるもので、気が付けば11時を少し過ぎていた。

「そろそろ流れてくるはずなのだよ」
「楽しみですね」
「そうだな………あ」

どうやら緑間の目には流れ星が見えたようだ。黒子は空を見上げる彼に寄り添い自分も見ようと目を凝らす。

「占いなど関係なくお前と同じものが見たかったのだよ」

切なげな声が聞こえたその時、星が流れた。





(どうか、彼も見ていますように。)


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Title by leere

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