小説

□宇宙人との無線通話
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「こちら黄瀬、応答願います」

どこからか小さくザーザーと耳障りな雑音と彼の声が聞こえる。
音の出所を見つけようと辺りを見回しても何もない。

何もないというのには少し語弊がある。
頭上には一面の星、足下には青々とした草が生え草原となっていた。空と地面は延々と広がっていて、遠くの方では地平線になりきれず交錯している。あそこはきっと、天地が逆さになっているはずだ。今立っている場所は暗い(星のお陰で周りが見えるが)のに、あの場所は明るい。どうやら昼夜も逆さになっている様子。

「こちら黄瀬、応答願います。緑間っち、応答願います。どうぞ」

またもや雑音と彼の声。
どうやら近づいているようだ。先程より音量は大きく、クリアに聞こえる。しかし、依然として発信源が分からない。

「緑間っち、そっちは星が見えてる?」

見えているのだよ。
口を開いても出てくるのは声ではなく、きらきらと光る石ころたち。大きさはまちまちだが吐き出すことに苦しみを感じない。二酸化炭素を吐き出すように、当たり前に出てくるそれらに驚いた。
黄色に緑、青や紫。一つ一つが輝いている。しかし、石ころたちは炎のように燃えだし上を目指し飛び跳ねた。
どこへ行くのかと目で追えば、彼ら(彼ら、と称するべきかは分からないが自分の意思で動いているようなのでそう呼ぶことにする)は空に浮かぶ兄弟たちと一緒に瞬き、会話をしているようだ。

その中で一際眩しい星が弧を描きこちらへやってきた。
手を出せばそこへ向けて落ちてくる。どうやら話があるようだ。
シューっと燃え尽きるような音を立てて手の上へ着地した星は、とても美しい光を放つわりに石ころ自体は荒削りをされた不格好さ。
だんだんと光が弱まって行くのと反比例するように、ザーザーという雑音が聞こえる。

「こっちも星が見えるっスよ」

石ころは完全に燃え尽きた。代わりに音がはっきり聞こえる。
今までの声の発信源はこいつだったようだ。どうりで遠くに聞こえるわけだ。

「こちら黄瀬、応答願います。どうぞ」
「こちら緑間、星が届いたのだよ。どうぞ」

やっと届いたか、と嬉しそうな声と連動しているのか無線機代わりの石ころはぴょんぴょん飛び跳ねる。
まったく、本人そっくりなのだよ。

「緑間っち、その星はオレからのプレゼントっスよ!」
「有り難く受け取っておくのだよ。オレからプレゼントは届いたのか?」

「とーってもキレイなお星様が届きました!」

きらきらしてて緑間っちみたいと石ころ無線機。

しかし、だんだんと聞こえだした雑音に彼の声が揉まれ邪魔され遠くなっていく。
途切れ途切れに聞こえたお別れの言葉は、なんとも自分を嬉しくしてくれた。




「きらきらお星様、次は夢が覚めたら会いましょう!」


星屑電波は今日も良好


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