12/02の日記

09:36
小ネタ
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今更境界の彼方にハマりだす……
そのうちちゃんと書きたい博臣夢。

( ˘ω˘ )
部室で暖めあうよ

女心は秋の空とはよく言ったものだと思う。
昼は青かった空は授業も終わり部活に出る頃には重苦しいねずみ色に変わっていた。
これは一雨降るな、と思っていたのも束の間にバタバタと激しい音と共に雨が降り出した。
「午前は雨の気配なんて感じなかったのに」
空のように重苦しい息に混じり零した言葉は俺と○○しかいない部室に染み込んだ。
雨が降り出すまでは今日の数学はいつも以上に眠たかっただの、体育のバドミントンの羽は何故けばつくのだろうとか、アッキーの眼鏡好きは一度病院に行った方がいいだとか、楽しそうに話していた○○だったが外の天気を見て段々と機嫌が悪くなってしまったようだ。
「今日は寒いからな。もしかしたらこのまま霙になるかもしれない」
天気予報では最低気温が5度を下回るらしく冬の訪れが感じられるそうだ。冷え性の俺にしてみれば迷惑この上ない。
「霙は嫌。びしゃびしゃして靴が濡れてしまうもの」
「それは雨でも同じことだろ。靴に浸水すると足先が冷えて仕方ない」
「博臣は冷え性だもんねぇ。今日なんて大変なんじゃないの?」
「大変なんてもんじゃないさ。もう指の感覚はなくなってるよ」
ありゃりゃと自分のことのように困り顔をした○○が少し可笑しくて笑えば、理解できないようにその顔のまま小首を傾げる。
そう言えばこの前学校に来ていた野良猫も同じようなことをしていたなと思い出しまた笑ってしまった。
「何笑ってるのよ〜人のことを笑いやがって!」
近付いてきた彼女の手は俺の両頬を押しつぶしてきた。
「イケメンだからって許されると思うなよ!顔潰して脱イケメンのしてやる!」
柔らかな彼方の手は暖かく気持ちが良い。
いくら屋内とはいえ暖房の点いていない部屋は肌寒く冷え込んでいるが、○○は自家発熱でもしているのか体温が高い。
頬にある温もりに自分の手を重ねればびくりと跳ねた細い肩。
「……驚かせたな。悪いがもう少しこのままでいてくれ」
押しつぶそうとしていた手には力がもうこもっていなくて、されるがままになっている。重ねて分かる小さな手に意識が余計にいってしまう。それを隠そうと口を開けば言うつもりのなかった本音が漏れる。
「立ってるの疲れるんだけど……」
照れ隠しであることが分かりきった棘を含めた言葉が今はとても可愛らしく思えた。
「座ればいいんじゃないか?」
「じゃあ手、離してよ」
「それは出来ない相談だな」
どうすればいいのよ、と俯いてしまった彼女だが、下を向くことで見えた耳は暖かそうな赤色になっていた。
「ここに座ればいいだろ」
俺は頬にあった彼女の左手を握り腰に手を回して強く引いた。
「ぅ……わっ、」
不意に力をかけられて受け身を取れなかった○○が倒れ込んで来るのを受け止め、自分の膝の上に向かい合うように乗せてやった。
「ここなら疲れないだろ」
「ちょっと!やだ、降ろして……は、恥ずかしっ」
暴れ出す○○を抱き締めて首元に顔を埋める。やはり暖かい。
「子供体温か……」
「う、うるさい!ねえお願いだから、離してよぉ」
彼女が身じろぐ度に髪が揺れ肌を擽る。あ、今いい匂いがした。
妹にしたいと思ったことは内緒にしておこう。

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