銀魂小説

□君花火
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また花火の季節がやってきた。

そのたびに俺はお前を想いだす。

最初にチャイナと祭りで会ったときは射的勝負をした。

仕事をサボって見つけたチャイナは眼鏡と一緒にいて、なんとなくむかついたから邪魔してやった。

本当はただ話しかけたかっただけだったのに。

結局祭りはテロのせいで台無し。

ただ最後に見上げた花火は、儚くて、綺麗だった。

素直に綺麗だと思えたのは隣にはしゃぐチャイナがいたからかもしれない。

それから何回か花火の季節になった。
なぜか毎年花火の隣にはチャイナがいたのに。

今、花火を見上げる俺の隣にチャイナはいない。

エイリアンバスターとなったチャイナは宇宙に旅立っていったから。

「バーカ。」

チャイナが旅立つ日も俺は素直になれなくて、いつものように喧嘩しただけだった。

綺麗だと思えない花火を見るのはこれで何回目だろうか。

「全然綺麗じゃねぇ。」

呟いた声が静かな夜の丘に響いた。

「相変わらず素直じゃないアルな。」

振り向くと少し背の伸びたチャイナがいた。

「こんなに綺麗なのに。」

「なんでこんなとこにいるんでィ、おめーは。」

「いちゃ悪いアルか。」

「お前は、宇宙にいるはずだろーが。」

俺の手の届かない場所に。

そらに。

いるはずだろ。

それなのにお前は笑って簡単に言うんだ。

「お前に会いたくなったから、帰ってきたアル。」

目の前のチャイナが愛しくて俺はチャイナを抱きしめた。

「お前は、私に会いたかったアルか?。」

抱きしめた腕に力をこめる。

「誰がお前なんかに。」

「素直じゃないアル。」

チャイナの笑う声が聞こえた。

素直になんか一生なれねぇ。

愛しすぎるお前の前では。

「あー!花火アル!。」

隣にはあの頃のようにはしゃぐチャイナがいた。

そしてまた夏の夜空に、大輪の花火が散る。

ああ、綺麗だ。

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