銀魂小説
□トリック オア トリート
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「トリック ア トリート」
それが私達を繋ぐ言葉だった。
これは、ハロウィンにまつわる怪物達の恋の物語。
むかしは怪物や妖怪たちがたくさんいたんだ。
ほとんどの怪物たちは皆穏やかで悪さなんかちっともしなかった。
でも、悪さをするごく一部の怪物たちのせいで人間は怪物を恐れ、嫌った。
今は、いろんな物が発達して怪物たちの住みかだった森は減っていった。
そんな怪物たちの中に若いミイラの怪物がいた。
名前はオキタ。
全身白い包帯まみれのオキタの顔からはミルクティー色の髪と恐らく美形であろう紅い瞳が見えた。
オキタはドSだが喧嘩の腕は怪物たちの中でも1、2位を争うほどだ。
いつもひょうひょうとした態度で寝てばっかりいる。
そんなオキタには秘密があった。
それは、秋になり始めている肌寒い日のことだった。
道に迷い、町に降りてしまったオキタは夜になるのをまっていた。
怪物は光に弱いからだ。
光にあたるとたちまち灰になってしまう。
それに人間に見つかったら面倒だ。
だんだんと日が沈み、町は電灯とお店の明かりが灯っていた。
オキタは始めてみる町の賑やかさに心を奪われていた。
「すげぇ、、、。」
思わず声を出したとき、背後で落ち葉を踏む音が聞こえた。
驚いて振り向くと、そこには一人の少女がいた。
恐らく少女も迷子になったんだろう。
買い物袋を持ったまま瞳に涙を溜めている。
服は草や泥でボロボロだった。
オキタが急いで逃げ出そうと目をそらした時、少女が口をひらいた。
「何で包帯だらけアルか。」
オキタは突然のことに戸惑ったが怪物だからとはいえる訳もなかった。
「お前こそ、何で泣いてるんでぃ、迷子か?。」
「泣いてなんかいないアル、迷子でもないネ!ただちょっとパピーとはぐれて、帰る道がわからないだけアル!。」
「それを迷子っていうんだよ。」
涙を袖で拭うと少女はオキタを睨み付けた。
「うるさいアル!大体お前私の質問に答えてないネ!。」
「あー、何か成り行きで?。」
「どんな成り行きで全身包帯だらけになるアルか!。」
「いろいろあんだよ。」
この少女は本当に鈍いらしい、全身包帯だらけで町をふらつくやついるわけねーだろ。
「ムカツク奴アルなー、お前名前なんていうネ?。」
「、、、オキタ。」
「お前は?。」
「カグラアル。」
少女の蒼い瞳がくりくりと動いた。
「変な名前。」
「何をぅ!。」
変な感じだ。
怪物の俺が人間と喧嘩してるなんて。
カグラはオキタに手を差し出した。
「?。」
「お前ムカツクけど、友達になったら必ず握手しろってパピーに言われてるネ。」
「とも、だち、、、?。」
「そうアル。」
早く手をだすネ。
そうながされオキタはカグラの手に手を伸ばしたが途中で引っ込めてしまった。
自分の手は土でよごれ、紫に変色している。
それに自分は怪物。
自分が触れてしまうと、少女が汚れてしまいそうで。
「どうしたアルか?。」
その時、町の明かりに紛れカグラを呼ぶ声が聞こえた。
「パピー!。」
「おお!カグラ、こんな所にいたのかー、探したぞ!。」
「ウン!今ねこいつと、。」
オキタがいた場所にはすでに誰もいなかった。
「あれ?オキタ?。」
カグラがオキタを探していると父が低い声で聞いた。
「カグラ、もしかしてそいつは怪物なんじゃないか?。もう、そいつには近づいちゃいけない、、。」
「何でアルか?。」
「怪物は悪い奴だからだ。」
そういった父の顔があまりにも真剣だから、カグラはただうなずくしかなかった。
確かにオキタの格好は変だった。
彼は怪物なのかもしれない。
けど、カグラにはどうしてもオキタが悪い奴には見えなかった。
カグラの頭に浮かんだのはオキタの深紅の瞳。
もう、会うことはできないのに。
あの紅い瞳をカグラは忘れることができなかった。
そのころオキタもまた、カグラに会いたいと思っていた。
自分の容姿をみても嫌わなかったこと。
ましてや、友達だといってくれたものなど一人もいなかった。
そして、あの真っ直ぐな蒼い瞳を忘れることができなかった。
しかし、怪物である自分がカグラに会ってしまうと、カグラまで危険な目に会うかもしれない。
そう思いながらもオキタの足は兄のような悪友の元に向かっていた。