リボーン小説
□大人になったら
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ハルは一人でボンゴレの基地内を歩いていた。
瞳に溜まっている涙は今にもこぼれ落ちそうだ。
悲しいわけじゃない。
ただ、悔しいのだ。
何も考えずにツナに泣きついてしまった自分に腹が立った。
不安なのはツナ達も同じことなのに。
もしかしたらそれ以上に。
あの笑顔の下にどれだけの不安を抱えているのだろう。
しばらくあるいていると、ふと足が止まった。
いつの間にか見知らぬ場所に迷いこんでしまっていたらしい。
あたりを見渡しても見覚えのあるものは何一つ無く、冷たい空間が続いているだけだった。
「はひ、ここはどこでしょう。」
情けない自分に余計に涙がでてきた時だった。
後ろから低い声がした。
「ここで何してるの、三浦ハル。」
一瞬身をすくませて振り向く。
声の主はボンゴレ最強の守護者、雲雀恭弥だった。
黒いスーツに漆黒の髪。
身長は随分伸びていたが彼が纏う独特の雰囲気はそのままだった。
「雲雀さん、ですか?。随分大人っぽくなられていますがっ!?。」
戸惑いの声をあげるハルをみて雲雀はあきれたように溜め息をつく。
「君が子供すぎるんだよ。」
「なっ!乙女に何てこと言うんですか!。」
頬っぺたを膨らまして怒るハルの姿に一人の女性の姿を重ねる。
「君は本当に変わらない。」
「はひっ!そういえばここの世界でのハルと雲雀さんの関係ってなんですか?。ハル、まだ雲雀さんと三回ぐらいしか喋ったことないですよ。」
雲雀は少し考えるしぐさをみせた。
「知りたい?。」
「知りたいです!。」
キラキラと目を輝かせるハルに雲雀は軽く答えた。
「教えない。」
「はひーっ!何でですか!。」
ハルはショックをうけた顔をしていたが雲雀はそれに動じることなく続ける。
十年たっても子供のような純粋な彼女なら、すぐに納得するであろう言葉はもう分かっている。
「未来は知らない方が楽しいんじゃない?。」
「はひっ、確かに。」
ハルは素直に頷くと満面の笑顔をみせた。
「もしかしたら、ハルと雲雀さんが仲良くお茶してたりするかもしれませんしね!。」
「本当おめでたい頭してるよね、君。」
やっぱり君は馬鹿だと思う。
「はひっ。」
「でもまあ。」
雲雀はそういうとまだ幼いハルの涙のあとが残る頬に手をあてた。
君はこの先何回涙を流すだろう。
血を知らない純粋な涙。
それでも君は笑ってられるから。
だから、
「楽しみにしてるといい。」
君の思い描いた未来が現実になるのは案外もうすぐかもね。